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11

カストルは横で眠る自分と同じ髪色を持つ女性の髪をそっと手に馴染むようにすくった。


「ん」

「悪い、起こしたか?」

「ん、今何時?」

「10時」

「え!?ちょっ、警護の時間!」


焦点が合わないのか虚ろな目をしていたポルックスの目が見開いた。瞳の色もカストルと同じ色だ。それが今更嬉しくて、まだ指に絡むポルックスの髪を優しく引いた。


「忘れたのか?今日は午後からだろ?」

「でも、あの塔の警護は私たちだけなのよ?夜間誰もいないのでさえ心配なのに」


勢い良く起き上がったせいで落ちたシーツを胸元まで手繰り寄せて俯く姿は本当に愛おしい。カストルは名残り惜しいが髪から指を離し、ポルックスの肩を抱き自身の胸へと寄せた。


「何を護らせられているのかも分からないのにか?」

「……でも、大切なものよ」

「……そうだな」


カストル、ポルックスは城の衛士にも関わらず、南の天を割る塔の護衛をさせられていた。五年間も、その理由は告げられぬまま。ただ、二人は使命を感じていた。

この塔を護ることが自分たちの使命だと。


「あぁ、やっぱり駄目。不安だわ」

「お前は……」


大人しく顔を埋めていたかと思えばポルックスは今にもベッドから下りようとしている。カストルは溜息を零しながらポルックスの細い腰を引き寄せた。


「きゃっ、ちょっ、カストル!」

「大丈夫だって、俺らがいない間は他の衛士がいるだろ?」

「それが心配なの!もし!」

「もし?」


ポルックスは言葉に詰まった。自分は何を言おうとしていたのだろうか。言葉の続きが紡げない。


「とにかく、何かあったら孤児に逆戻りよ」


腰に絡まるカストルの腕を解き、肌を隠す様子もなくベッドから出ていく。


「確かに、そりゃまずい」

「でしょ?今更あんな生活には戻れないわ」

「だよなー。今更……あれ?俺らいつから城に上がったんだっけ」

「何言ってんの?あの日……あれ?」

「あの日?」


双子座の名前を授けられたカストルとポルックスは紡げない記憶に動揺した。


「いつから私はポルックスに?」

「いつから俺はカストルに?」


見えない不安にポルックスはカストルに駆け寄った。震えるその体をカストルの胸に寄せる。それに応えるようにカストルはポルックスを胸に抱き締めた。

複雑に絡められた糸が絆の糸に解かれていく。

クスクスと何処かの誰かが嗤った。


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