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10

シディアスは泪を流していた。また?と濡れる頬を拭った。


「ははうえー!」


ふと、名前を呼ばれた方を見れば愛しい息子が父親の腕を引きながらやってきた。


「あら、どうしたの?」

「ははうえが、まだ泣いてたから、ちちうえ連れてきました!」

「……ありがとう」


褒めて褒めてと期待一杯の瞳でシディアスを見つめる息子の柔らかい赤毛を撫でた。


「シシー、大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫よ。わざわざ、ごめんなさい」

「謝ることはない。だが、最近君はよく泣いている」


マクベスは君に泣かれると参ると項垂れるながら、そっとシディアスの頬を大きなごつごつした手で包みこんだ。


「何故、泪が流れるのか分からないの。ただ目が覚めると泪が止まらないの」


シディアスは何処を見つめるわけでもなくただ真っ直ぐと前を見据えながらその両の瞳から泪を流す。


「ははうえっ!泣かないで!ちちうえ!ははうえが泣きやまないよ!どうして!ちちうえ!ははうえを助けて!」


今にも泣き出しそうな息子が縋るようにマクベスの服を両手で握り締めながら引っ張る。


「シシー、大丈夫だ。俺はここにいる」

「えぇ、マクベス。私はここにいます」


互いの存在を確かめるように指を絡め額を合わせる。愛の結晶を二人の間に閉じ込めて。

シディアスはいつから付けているかも忘れてしまった紫紺の石の付いたネックレスを祈るように握り締めた。

マクベスは、愛しい者が涙を流しているのにそれを拭うことしかできない無力さに打ちひしがれる。

何が騎士だ。愛しい者を護れぬのならば、騎士なんて称号投げ捨ててしまいたかった。


「ははうえ、ちちうえ、苦しいです!」


二人に挟まれた結晶が、声を上げれば空気は和らぐ。自然と綻ぶ頬に二人は顔を見合わせ、そっと唇を寄せた。

まだ笑えるなら、大丈夫。


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