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06

当時、ヘル五才。シディアス、十二才。

シディアスは中級貴族の家の末娘だった。姉が三人、兄が四人。子沢山にも程があるだろとシディアスは自分の親を呆れて思っていた。

姉三人は母に似て美しかった。ブロンドの髪が羨ましかった。どうして、私だけ父上にて赤毛なのだろうと。常日頃鏡を見ては父上に心の中で文句を言っていた。

しかし、自分に髪色が似たのが余程嬉しかったのか父上には可愛いがられていた。それはもう、うざったいぐらいに。


「ほら、シディアス。しっかり立ちなさい。王女様達がいらっしゃる」

「はい」


今日もシディアスは姉や兄たちを差し置いて城のパティーに連れてこられていた。正直、堅苦しいパティーは嫌いだった。愛想の欠片もないシディアスをよく挫けず連れてくると父上をある意味尊敬さえしていた。


「なんと、アフロディーナ様は日に日にメノア王妃に似てきていらっしゃる」


アフロディーナ様、確かに五才にはあり得ない美しさを身に纏っていた。しかし、シディアスはアフロディーナの影のようなもう一人の王女の方が気になった。


「父上」

「何だ?」

「ヘル様は、まるでアフロディーナ様の影みたいなお人ね」


あの時の血の気の引いた父上の顔を忘れた日はない。面白いったらありゃしない。誰にも聞こえていないのに、今にも土下座する勢いだった。


「シディアス、少しそこにいなさい」

「はい」


父上は知り合いの大臣に呼ばれたようで、シディアスを置いて行ってしまった。

シディアスはようやく息ができると息を吐く。煌びやかな天井は目が眩みそうなほどの眩しさ。貴婦人やそのお嬢様方も気合いを入れてめかし込んできたらしく眩しい上に鼻が曲がりそう。

退屈でしかないこの場から逃げ出してしまおうかと思っていた時、ドレスの裾を引っ張られた。


「ねぇ」

「え」

「あなた、随分つまらそうね」


これがシディアスとヘルの出会いだった。

五才児とは思えぬ口振りや冷めた紫紺の瞳にシディアスは惹かれた。そして、この子の傍にいたら楽しいだろうななんて思って。


「私、あなたの侍女になってあげましょうか?」


シディアスがヘルと話しているのに気付いた父親が慌てて近付いてきているのにシディアスは気付かなかった。そして、何やら上からの口調に父親は絶句し、今度こそその場で土下座したのだった。


「あなた物好きね」

「よく言われます」


二人の子供の会話に国王ただ一人豪快に笑い、もう一人の王女アフロディーナときたら「私もジジョ欲しい!」だなんて的外れなことを言っていた。


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