01
産声を上げた。
始まりの瞬間は同じだった。むしろ私の方が早かった。なのに何故だろう?次の瞬間、もうあの子と私の間には埋めようもない差ができていた。
「う、産まれた……、産まれたー!」
歓喜の声が湧き起こった。瞬く間のうちに国中に渡り、山を越え、川を越え、東西南北の国へとその嬉しい叫びは駆け抜けた。
しかし、国王の顔色は憂いに満ちている。抱き締めた我が子に不安気な瞳を向けることしかできなかった。
「オーディン、そんな顔をしないで」
「メノア」
「大丈夫。この子たちは、あなたの子どもだもの。それに、この国はあなたの国よ」
「……あぁ」
愛する妻に優しい言葉を掛けられても、王の心を覆った霧は晴れることはなかった。
同年、東西南北の国でも、王女、王子が誕生していた。同じ年に五つの国に王家の者が産まれるのは遥か彼方振りであった。
それは、新たな物語の始まりでもあったのだ。[ 3/46 ][*prev] [next#]
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