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口元を手で覆って漏れる嗚咽を堪えようとした。でも、涙は止まることを知らないし、込み上げてくる嗚咽を掻き消すことはできなかった。

森の入り口で崩れ落ちたヘルは立ち上がることができなかった。頭の隅でせっかくのドレスが汚れてしまうなんて思いながらも、悲しみで震える身体に力が入らなかった。


「ヘル」


不意に呼ばれたことに、びくりと身体が反応する。誰だか分かっていた。分かって尚更恐しくて、顔を挙げれなかった。

あなたも私を氷のように冷たい目で見るの?

レグルスにも見放され、追い打ちをかけるようにあなたまで私を、私を……。


「わ、分かってるわ!私が、私が悪いんでしょう!?分かってる、もう、嫌ってほど分かってる!」


分からない、分からない。いったい私が何をしたというの?

太陽みたいなあの子がいなかったら、私は、もっと。

思って、吐き気がした。

あぁ、私はなんてことを考えてしまったんだろう。大切な妹が、大切な片割れが、いなければなんて。

私は最低だ。


「どうして?」

「ヘル」

「……ッ、シリウス、私、最低だわ!」


正面で片膝を付いた彼から後退るように距離をとった。ヘルは恐ろしかった。

恐ろしくて恐ろしくて、自分が一瞬でも思ってしまった過ちが。


「私、私、あの子が憎いだなんて一度も思ったことないわ!本当よ!」

「……」

「ただ、どうしてって、思うの。たまに。別にあの子みたいな立場じゃなくて良かったって思ってるのよ?私、面倒なのは嫌いだけど、一人は嫌いじゃないし。でも、一日一日すぎるのが怖いの。きっと、きっと、私は、このまま独りなんだわ」


孤独が恐怖だと、始めて知った気がした。


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