11
部屋から眺める空は星が散りばめられていた。きっと明日は晴天だろう。毎年誕生祭の日は天気が良い。
きっとディナが晴れ女だからね。
「お姉様?」
「ノックしなさいっていつも言っているでしょう」
「ごめんなさい」
謝りながら部屋に入ってきたディナ。やり直させようかと思ったが何だか面倒で開けた口をとじた。きっと何度言ってもこの先直ることはないのだろう。
「お姉様、シリウスはね……」
「あなたに言われなくても分かってるわ」
「……そう。そうよね、ごめんなさい」
きつい言い方をしてしまった。瞬間、罪悪感が胸を過るが言葉にすることはない。ヘルはディナみたいな純粋さも素直さも持ち合わせてはいなかったから。
「もう寝なさい。あまりに寝起きが悪かったらあなたの大事にしている香水を吹き掛けてあげるから」
「だ、だめ!お姉様、それだけはだめ!」
「ふふっ、だったらすぐにベッドに入ることをお勧めするわ」
「おやすみなさい、お姉様!絶対それだけはしないでね!」
「はいはい」
慌てたように出て行くディナの背中をクスクスと笑いながら見送った。
アフロディーナは大地を照らす太陽のような子だった。それに比べヘルは、まるで影。メイドや民の間では、二人を光と闇だと噂している。
この世界で闇や影の中という言葉は容易に口にしてはならない言葉で、皆口に出すことはなかったが、聡いヘルが気付かないはずがなかった。
それに、自我というものが芽生えたときから二人に対する態度は面白いぐらいに違ったのだから。[ 13/46 ][*prev] [next#]
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