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PERFECT LOVER



Hello,Darling 

 緑生い茂る山の中を開拓して造られた穂模伊学園、通称ほも学。そこは全寮制の男子校であるが故に、有り余った性欲を同性に向け、見目麗しい者にはファンクラブが出来上がるという混沌とした独自の文化が成立している。
 ファンクラブが結成される一つの要因として、『抱きたい抱かれたいランキング』などというふざけた格付けが存在し、それは毎年三月に行われる一大イベントとなっている。さらにその得点数で次期生徒会の役員まで決めてしまうのだから、もう少し考慮すべきではないか――そう言う生徒もいると言えばいるのだ。が、彼らの意見は黄色い歓声の荒波に掻き消され、今のところその選出方法は変わらずのままだ。
 今年度の生徒会もまた、華々しいメンバーが揃っている。生徒総会を開けば、まるでアイドルのコンサート会場のように盛り上がり、最前列では『ガミちゃん』とデコレーションされた蛍光色のハート型のうちわを振る生徒までいるのだ。
「だからテメェそれ止めろっつっただろうが!」
「あらやだ照れちゃってかわいいわねガミちゃん」
 デコレーションされたうちわを振る――そこまでするのは流石に彼一人だけで、もし彼以外が『ガミちゃん』にそんなことをすれば、間違いなく彼が金属バットを片手に押しかけてくるであろう。それは、この学園にいる誰もが想像できることだ。
 紫色の派手な髪と鬼神の如く他を圧倒する強さから、『紫鬼』と呼ばれている彼――林堂紫音の名を知らない者の方が少ない。
「以上で生徒総会を終了とする、解散」
「ガーミちゃぁあああんっ!今日もカッコよかったわよォ」
「うるせぇさっさと教室に行け!」
 照れ屋さんなんだからぁ、とくねくねしている紫音に構うことなく、『ガミちゃん』こと大賀美琴は檀上から袖口の方へと姿を消した。
「今日も全然相手にされてねーな」
「昨日ちょっとしつこくヤりすぎたからご機嫌ナナメなのよ」
「あっちゃー、今日総会あんのに盛ったんならそりゃ紫音が悪いねー」
「だってガミちゃんエロいんだもーん」
「はいはい、もんとか気持ち悪いよ」
 この会話をしているのが最強のチームと名高い『butterfly』の総長とナンバー2である。こんなにふざけた二人がトップで果たして本当に強いのか、と疑問を抱いた不良達が喧嘩を吹っ掛けてきたり、挑発をしてきたりしていた頃はまだ時間を潰せていたので良かったのだ。生徒会長であり、ほぼゆっくり会える時間のない美琴の邪魔をしたくはない。けれど、大人しく待っていられる程、余裕がある訳ではない。

(後略)






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