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PERFECT LOVER



伝われ! 

 何気ない日常、変わりのない毎日。
 良く言えば平和で安泰な日々。悪く言えば代わり映えのしない退屈な日々。
 
俺は今日、自ら安泰な日々をぶち壊そうとしている。

 人ひとりいない静かな廊下を、わざと足音を大きく立てながら廊下を歩く。そうしないと、今すぐ回れ右で後退してしまいそうだ。向かうは風紀室。俺の好きな人がいる場所。
まっすぐ廊下を渡った突き当りの部屋。風紀委員会と書かれたプレートを確認すると、引き戸を思い切り引いた。想像以上に大きな音を立てた扉に、並んで座っていた風紀委員たちが一斉にこちらを見る。一瞬怯みそうになるがぐっとこらえる。昨日、何百回と練習したじゃないか。この展開も予想済みだ。その練習のおかげで寝不足なのだが、アドレナリン大放出でギンギラギンだ。俺は一番奥の委員長席前まで早足で歩いていくと、大きく息を吸い込んだ。
「風紀委員長の鈴掛。好きだ、俺と突き……間違えた付き合え」
 「……月見野、今は会議中だ。冗談は後にしてくれ」
 悪いな。そう一言告げられて、あれよあれよという間に部屋の外に追い出されてしまった。

 片思い歴十年とちょっと。友人という、もっとも安全な地位から勇気をだして飛び出した。
 しかし、俺の一世一代の大告白は、冗談という一言で片づけられてしまったのであった。
 もう一度乗り込もうとしたが、扉に鍵をかけられてしまった。俺は仕方なく生徒会室に戻ることにした。

 生徒会室に戻り、自分のデスクの前に戻って来た途端、じわじわと怒りが込み上げてきた。
 「あんのクソ風紀が……なぁにが冗談だァ?ふざけんじゃねええ!」
 腹いせに生徒会室にあったゴミ箱(中身は空だ)を蹴り飛ばす。
 「ちょっと会長。振られたからって、やつあたりはやめてくださいよ」
 副会長の筑紫が、ゴミ箱を直しながら呆れたように言う。
 「振られてねぇよ、タイミングが悪かっただけだ」
  そうだ。ただ乗り込んだ時間が駄目だっただけで。明日またリベンジだ。気合を入れるために筑紫が淹れてくれた、濃いブラックコーヒを流し込む。カフェイン効果なのか、その日の夜はほとんど眠れなかった。

(後略)






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