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PERFECT LOVER



青息吐息 

出来る男になれ。そうすれば周りは認めてくれる。
 尊敬する父によく言われていた言葉だ。小学校で苛められていた幼い息子が、強くて逞しい大人に成長できるようにと願っての言葉だろう。
 そんな父の励ましは俺が努力する糧となった。授業を真面目に受け、家でも母に付き添ってもらいながら沢山勉強してテストの成績を上げた。運動は得意ではないが、体力面で劣るのならとテクニックを磨き、苦手な体育の授業で活躍する事が多くなった。そうすればいつの間にか俺より上の者はいなくなり、イジメもすっかり無くなった。イジメがあったことすら無かったかのように周りの奴らは俺に親しげに接する。父の言った通り認めてくれたのだろう。やがて俺はクラスの、いや、学年一の人気者になった。
 偏差値の高い中学校に進学しても俺は努力を惜しまなかった。優等生を貫き通し、毎年学級委員に推挙するほど周りは俺の実力を認め、頼ってくれていた。担任の教師に名門高校への進学を薦められ、首席で入学試験をパスすれば母は大喜びで俺の合格を祝ってくれた。その頃になると父は俺にあの言葉を言わなくなった。
 俺の進学先の高校は全国的にも名の知れた私立の名門校だった。ただ偏差値が高いだけではなく、幼稚舎から大学まで併設しているためセレブ育ちの学生が数多く通っていたり、スポーツ特待制度を設けて地方から学生を呼んだりしている、言わば将来有望な子供たちが集まる教育施設である。ちなみに元が男子校であるため、共学になった今でも女子生徒の数は少ない。
 そんな場所に俺は入学した。家がお金持ちだったり、中学時代にスポーツで活躍したなどではなく、単に頭の良さだけで入る生徒はさほど珍しくない。しかし、俺は将来を約束され、それなりの英才教育を受けてきたエリート集団を差し置いて入学試験をほぼ満点に近い点数で合格してしまったため、入学当初から同学年の生徒や教師から一目置かれる存在となった。
 どうしてあんな奴が……。そんな事をよく陰で言われていたものだ。俺の成績に嫉妬した故の陰口だろうが、俺は特に気にしなかった。悔しいなら俺より出来るようになればいい。俺はこれまで通りするだけだ。さすがに運動ではスポーツ推薦で入ってきた生徒らに敵わないが、教養で常に一番を保持できるよう努力していれば、クラスメイトからも、教師からも、更には上級生からも頼りにされ、一年生の終わりになると俺は生徒会長になっていた。

(後略)






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