PERFECT LOVER 悪夢の一日 『さーて、残るは一位と最下位です』 隔絶された環境において少しでも外界の情報を仕入れるために毎朝見ている報道番組で、恒例のように流される星座占い。 いつもは仕事のことを考えていたり前日の授業内容を思い出して復習したりして聞き流していたが、今日だけは何故か若い女性アナウンサーの耳障りな高い声が彼の意識に入ってきてしまった。 『まず今日の最下位は……ごめんなさい、乙女座のあなたです』 画面にアナウンサーの顔が映っているかは確認していないが、それでも声の調子から本気で申し訳なく思っているように聞こえる。それが彼女の仕事なのだからそう聞こえなければ話にならないけれど。 (所詮占いだろ。気にしてどうする) 十二星座のうちどれかが必ず最下位になる。それがたまたま彼の星座だったとしても、それが実生活に影響するはずもない。 そう思いテレビを消そうとしてようやく画面を見れば、散々な文章が画面いっぱいに広がっていて思わず固まってしまった。 『今日はとにかくついてない日。何をしてもダメダメでしょう。やることなすこと全部が裏目に出ちゃう最悪な日になっちゃうかもしれません』 アナウンサーが明瞭な声で読み上げる内容はとんでもない。 占いという根拠のない迷信を信じてはいないがそれでも最下位と言われて喜ぶ人間はごく少数だろう。誰だって朝からこんなものを見せられては気が滅入る。それが普通の反応だ。 『そんな乙女座のあなたのラッキーアイテムはお守り≠ナす。どんな種類でもいいですから、必ず一つ、肌身離さず持ち歩いてくださいね』 おい待てそこまでか。 それが占いをつい最後まで見てしまった彼――神原の感想だった。 『そして気になる今日の一位は……おめでとうございます、さそり座のあなたです!気になっている人と急接近の予感。恋人がいる方はもっと絆が深まりそうです。お邪魔虫に気を付けてくださいね。ラッキーアイテムは…』 神原の気持ちを他所に、アナウンサーは何事もなかったように一位の占いを読み上げ続けた。 (後略) |