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PERFECT LOVER



夜を待ってる 

―――何があっても、味方でいるよ。

 そう言っていたのは、誰だっただろうか。
 片桐綴は考える。
誰に言われたのか、顔も名前も思い出すことが出来ないのに、その言葉だけはよく思い出す。
もしかしたら、本当は誰にもそんなことは言われた事がないのかもしれない。それでも、自分以外に生徒会役員が誰もいない生徒会室で、たった一人書類を片付けなければいけない環境下では、その言葉が唯一の支えであると言っても良いのだから、思い出してしまうのも仕方のないことだ。
 俯いた瞬間、視界を遮った黒髪を若干鬱陶しいと思いながらもそのままに、綴は書類に手を伸ばした。

「……さて、どうするか」

 どうするもなにも、期限が近いモノから、それこそ、片っ端から片付けていく他、ないのだが。
思わず出てしまった溜息の後、この役職に就いてから何度となく思っていたことを内心で呟く。

(向いていない)

何をどう考えてみても、自分に『生徒会長』が向いているとは思えない。
そんなことを思いながら、綴は書類を捌いていく。ふと視線を上げれば、目の前に金髪の生徒がいた。
森宮志津。
 綴より頻度は少ないものの、比較的生徒会室に姿を現し書類を片付けてくれることがある彼は、書記を任されているだけあって、整った文字を書く。

「休憩したら、会長」

 ふわりと微笑まれた綴は、どうしたものかと思いながら手元に残っている書類と森宮の顔を、見比べた。

「会長が休憩してる間、ぼくが片付けとくからさ」

 目の前に差し出されたティーカップとチョコレートを見た綴は、その言葉に甘えることにした。
 鼻歌混じりに書類にペンを滑らせている森宮が生徒会役員に選ばれた事は、理解出来る。他のメンバーにしても、檀上に佇むだけでその場が華やかになる。だからこそ、会長職に自分が選ばれた理由が、半年経った今でも分からずにいる。

(後略)







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