▼番外編
(拍手にて置いていた番外編です)
教室の片隅にて、彼女が弁当箱片手にこっちにやって来た。
「どうだろう。料理研究家になれるかな」
「毒物研究所に変更しろ」
「お腹すいてなかった?ふむ、チーズとチョコは筑前煮には合わないか…」
「…お前そんなモンオレに食わせようとしてたのか」
「ビーフストロガノフみたいな食感がするんだよ」
食ったのかよ。
はたからみれば彼女に弁当作って貰った彼氏みたいに見えるのだろう。中身さえまともなら。本人にとってはオレに味見してもらおうと意気込んでもってきただけで、殺意が無いだけありがたいけど。めんどくせーけどオレは命が大切だから断固拒否させてもらう。
「コレもだめかぁ」
彼女がもう片手の手に持っていたノートの、真ん中の走り書きにまたひとつ、斜線を引いた。ちなみに線の下の項目を辿ると通訳、介護士、エアギタリスト、映画監督、弁護士、刑事、漫画家その他大勢。これは余談だが、あの海の日に手伝うとなんとなく溢してしまったオレは幾度となく彼女の実験の犠牲となっていて、道端のフィリピン人にいきなり声をかけて怒らした彼女の尻拭いとか、自作映画の俳優(これは思い出したくない)とか。そして今日なんか挙げ句の果てに殺されるところだったわけだ。
将来探しの夢リスト、料理研究家に新たな斜線が加わった。恐る恐る次の項目を横目で追えば、美容師、の文字。オレはざんぎり頭になった自分を想像し、明日学校をサボることを決意した。
「…んなバラエティーにとんだ内容じゃなくてよ、もうちょい平凡なの考えれば」
「うーん…あ、でもね、最近わかったことがあるよ」
「なんだよ」
「わたし、最近奈良君と一緒にいるのが楽しい」
「ぶっ」
(何よあれ)
腹立たしい。最近のシカマルはあの子と仲がいい。あの子は、髪型とか服装とか全然気にしなそうだし、なんていうかこう、我が道いってますみたいな感じ?別段気にもならなかったけど。
信じらんない!なんであの子なのよ?一年前にシカマルがテマリさんと付き合ってたときはこんなイライラしなかった。確かに知ったときはショックだったし嫉妬みたいなものはあったけど、こういうもやもやとした感情とはちがくて。なによこの、悔しいの。
「意外だよなー」
シカマルとあの子が弁当を食べてる姿を遠巻きにながめつつ、キバが笑う。
「前のテマリみたいに、シカマルのタイプって年上美人派だと思ってたのによ〜」
あいつさ、けっこう着痩せするタイプだったりしてなーと呟いた。
「キバみたいなただの巨乳好きじゃないのよ変態!」
「違ぇよ!お前だってイケメンイケメンって顔ばっかの癖によ!」
「でもシカマル、なんか楽しそうだよね」
チョウジは相変わらずだ。キバを叩く手を止め、私は再度シカマルとあの子を見る。シカマルは困ったように、けれど楽しそうに笑っているのだった。
(あのふたり最近仲いいわよね〜)
(付き合ってんのかな)
(にしてはシカマルげっそりしてるってばよ)
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