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トトンタタンときどきがたん、田舎の電車はなんでこうもよく揺れるのか、シカマルは考えるのがめんどうだった。平日でぽつぽつと片手で数えられる人数しか乗せていないくだり電車に揺らり揺られて。

向かいの椅子に座る彼女は、靴を脱ぎ落として椅子に上がり、町が畑になっていく風景を見ている。こどもかよ。呆れた。
冷房だけ、ちょうどいい温度で。


海にいこうと彼女が言う。


今週末家族でちょっとでかけようか、ちょっとより全然遠い海なんて、運賃もなかなかのものである。学校にしか行くつもりのなかったシカマルは、小銭程度しか持っていない。

「マジで行くのかよ」

「うん」

「…オレ、帰りの分持ってねーんだけど」

「貸すよ」

なんでシカマルなのか。海なら、週末にいのとかサクラでも受験勉強の息抜きと言って誘えばいい。ふつうの平日に、学校をサボってまでなんで。しかもろくに話したことのない、シカマルを連れて。自分に気があるとか自意識過剰なことを考える以前に、彼女が変人だったことを思い出した。気紛れか。そこら辺に歩いてる奴なら誰でもいいんじゃないか。



『3番線にのぼり列車がまいります。黄色い線の内側でお待ちください』


となりのホームにくるだろう救いの手に、こういうのなんていうんだっけかと。藁にも縋る思い。ちょっと違う気もする。


「やっぱ帰るわ」

「行かないの?」

「これ乗りゃあそのまま着くだろ」

「ふうん」

「あれなら他の奴と待ち合わせろよ。女友達とかよ」

立ち上がってドアに歩いていくと、彼女と目が合った。



「だって奈良くん、いつも遠くを見てるから」



『4番線ドアが閉まります。ご注意ください。』



言うなよ。


そんな目で見るな。海の水より透明で、見下すのでもなく見上げるのでもなく。なんでもそのままに見すかした目で見るなよと。本当はめんどくさいわけじゃないことも、半分よりおおく、逃げたいと思ってることも。やめろよ。やめろ。この線より外側には踏み出したくない。

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