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どこからがはじまりだったのかと言えば、ナルトが行こうと言い出したところからだろうか。屋上なんて漫画とアニメの世界ばかりの空間で、結局は鍵のかけられて、目的を見失ったてっぺんでしかない。やたらと青いイメージがある。あとは白。雲の。
授業料払ってんのにもったいねえってばよと不平を漏らすクラスメイトに連れられて、キバもオレも半分呆れてはいるものの、実はぜんぜん興味ないわけではない。雲は自分の数少ない好きなものに該当する。空もまた然り。教室の机は肩が凝る。ベランダはそもそも眠る場所じゃない。普段なら夏の屋上なんて灼熱地獄に自ら進んでいくこともないが、その日はちょっと覗きに行ってみるのも悪くないかと。ほんとその程度。
「おいはやくしろよナルトー」

「しゅーちゅーしてんだよ」 そこいらへんで拾ったヘアピンで、ちょっと苦戦しながら。数分後にはカチャリと小気味よい音が耳に届いた。成程伊達に人生を悪戯悪行に費やしてきたわけじゃない。別にナルトを誉めてるわけじゃないが。
がたのきた扉は想像とおり甲高い音で鳴くように開いた。オレたちのいる狭い通路にも光がさす。やっぱり青である。暑さに溶けるような色。眩しい。おまけに今日は風強え。
「あ」
声を漏らしたのはナルトかキバか、どちらだったか。
灰色のコンクリートと青の間、視界のど真ん中に、誰かが立っていた。短すぎないスカートがバタバタと音をたて、髪はなびくなんて優雅なものじゃなく、台風の日の傘の様に荒々しく風にふかれている。
上を見てただ突っ立っている。
「あ」

太陽光が眩しくて、表情が見えない。彼女が振り向くと、隣から二度目のあ、が出た。ふと弱まった日差し。黒い瞳が、じ、とこちらを捉えていた。

(ラストサマー)


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