控えめに言って、夏って最高だよね。
青い空に入道雲。
甲子園。
ビールと枝豆。
そしてなんといっても 海。
ふり注ぐ太陽の光を受けて反射する水面、そこには必ず 麗しいお嬢さんがセットなわけで。夏、パーフェクトシーズン。そう、それがいま、俺の目の前に広がってる世界だ。
海辺のプールサイドに、パラソルの下で寛ぐあかりさん。なんですかここは。聖域?着の身着のままプールに飛び込むのが正常なリアクションってもんですよ。
冗談抜きにマジでどうなってんだって思うほど、指宿にはまるで海外のリゾート地みたいな場所だ。肩にはりつくシャツ越し、感じる風まで東京の湿気た風とぜんぜん違うし、水平線に浮かぶ峰 見渡す景色はどこもくっきり濃い色彩でできてる。

ああ 俺たち、灰色のビル街を抜け出して、夏の広大な空をひとっ飛びしてこの極楽にやって来たんだな……
仕事しに。



「モモ 浮き輪おすよー?そーれっ」


キャッキャッ 浅いプールではしゃぐちいさい末っ子ちゃんと、いかにもピュアで良い子そうな真ん中の妹ちゃん。あかりさんの妹たち、可愛すぎだろ。
次女の妹ちゃんを見つめながら、まったく微動だに出来ずにいるヤングアニマルを約1名 発見。

「…桐山あああー」

そっかー、あの子なわけね。ハイわかりました。
お前甘酸っぺーよもう。砂糖吐きそう。
っていうか、大阪組から『桐山婚約したってよ』説を聞いて、何を〜俺たちに内緒でけしからん!!と確かめに来たわけだが。

「なーんかあのロダン的ポーズを見るだに、まだ何ひとつ進展してないっつうか…一方的に脳内で理論的に話を進めてる線が濃厚だな」

「だな。ていうかごめん、俺あかりさんしか見えてない」

「奇遇ですね僕もです」

「ていうか俺たち、こんなズブぬれで今日の前夜祭と大盤解説どうしようねー」

「うん。着替え持って来てないよねー…」

俺にいっちゃんに横溝くん。この日差しで乾いてくれんかなーとか呑気に濡れたまんま途方に暮れてるが、どうしようねほんと。洒落にならん……



「みなさーん」

そろそろなんとかせねばという頃合いに、コツ コツ 誰かの靴音がプールサイドを小気味良く打った。

「だれにかけても電話繋がらないから探しましたよ。ホテルの会場係さんが、時間前倒しで明日の解説打ち合わせしませんかって……て、あれ どうして皆さん……揃いも揃ってずぶ濡れなんですか?」

振り返った先、淡いサマースーツに身を包んだ雫は、俺たちが普段お目にかかったことないような呆れた表情をしていた。
言えない。あかりさんの帽子取ろうとしてプールに飛び込んだとか 雫には口が裂けても言えないよね……うん。

指宿、波乱の幕開け


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