口煩い母と恐妻家の父の間に育ったから、いくらめんどくさくとも女絡みの記念日には気を配らねェと地獄を見る って身に沁みている。
自慢じゃないがシズクの誕生日祝いの連続記録を更新し続けてきたので よって今年も どっかの誰かに茶々入れられることなく、一緒に過ごす…

「あっいたいた探してたのよシカマル〜、ねえ!シズクが我愛羅君に呼び出されてたわよ〜」

「我愛羅?」

……つもりだった。





一報を聞きつけ到着した頃には後の祭り。

「くっ…遅かったか!」


道には野次馬の人だかり 中心に立つ風影の、手に真紅の花束が。

「誕生日と聞いた。おめでとう」

「あ、ありがとう。我愛羅」


木ノ葉通りは黄色い悲鳴 やんややんやの大盛り上がりだ。

(眩しすぎる…)
(風影様イケメンー)
(我愛羅やるじゃん)
(リベンジか?)


「ホントにいいの?こんな立派な花束」

「友としての気持ちだ」


こちらまで香ってきそうな濃い赤。イヤイヤ待て 良く見ろ その色じゃ花言葉とが噛み合ってねーよ。天然か?確信犯か?


「すごい!薔薇の花束って初めてもらったよ!」

やられたぜ。



「何…だと…!?」

時 同じくして駆けつけた某上忍(30)、シズクが我愛羅の薔薇のブーケを素直に受け取ったもんだから驚愕に目を見開く。ハラリ…“甘栗甘バイキング券”のペアチケットは空しくも地に落ちた。


「オレの先を越すとは…やはり天才…」

あの アンタ甘いモン苦手な癖に今日はスイーツバイキングで釣る計画だったんすか。


このめんどくせー特別な日に、カカシ先生が何かしらの策を打って来ることは火を見るより明らか。横槍を食い止めようと 二、三日前から足の引っ張り合いに。
お陰様で今日も今日とて互いの妨害工作に勤しんでいた。
そんな場合じゃなかった。


「連携プログラムの会議日程が繰り上げなんて、綱手様も急なんだから。我愛羅もカンクロウさんも木の葉まで来るのも大変だったでしょ?」

「いや…問題はない。里をテマリに任せてあるからな」


「我愛羅、そろそろ時間じゃん?」

「あ…私も会議に同席してもいいかな?医療班の連携プログラムでいくつか確認したいことあるんだったや」

「助かる。お前も出席すると話が早い」


は?
シズクは今日非番を取ってるはず。それを見越して めんどくせーのにわざわざオレは、いのの勧めるランチ店のリサーチとか デートコースの計画とか 色々したんだが。
ここで会議に参加されるとプランは帳消しだ。


「ちょっと待った!」


「あれ シカマルにカカシ先生、二人共こんなとこでどうしたの?」

「お前今日は非番なんだろ。こんな日に会議出なくてもよ」


「そう シカマルの言う通り、流石に休日まで返上しなくてもいーんじゃない?」

「でもこれも仕事のうちだし」


「いやいや、休みなんだからさ」

「休めって」

「それに今日は――」

「もう、二人ともいい加減にしてよ!」

仕事です!!とシズクが啖呵を切ったのは言うまでもない。




そうして後に残されて のべつ幕なしに言い分を並べるオレたち。

「お前 なんで躍起になってオレの妨害なんかするの ちゃんとシズク捕まえときなさいよ」


「散々邪魔してきた先生に言われたくないんスけど」

木ノ葉隠れでの対談がこうも都合良く入るもんなのか知らんが とんだダークホース 不覚 我愛羅にしてやられたのだ。
赤い薔薇の花束をスマートに渡す芸当は 少なくともオレらに真似できねェ。
虚しくすきま風は吹く。漁夫の利とはまさにこのことで、まんまとかっさらわれちまった。


「…オレたちでこう揉めてちゃ、一向にダメっすね」


計画は一から練り直しだ。
隣で肩を落とす上忍に睨みつつの目配せをした。
この人と結託するのは些か乗り気じゃねェ。しかし無駄に邪魔し合って肝心のものが他に釣られて手に入らないなら、手を取るのもひとつの突破口である。

「今日だけっスから」

「ま 今日だけね」

奇跡的に利害関係が一致した。



*


会議が終了したのは正午だった。常ならば木の葉と砂の参加者たちでこのまま会食(という体での五代目の酒宴)になる。
つまり また捕まらなくなる。
それだけは なんとしてでも阻止しなければならない。

「おーい、シズク こっちこっち」


火影邸の前で二人 大人気なく待ち構えて、会議終わりで正面玄関から出てきたシズクをまずカカシ先生が手招きした。あいつの手にはあの 真赤の花束がある。

お次はオレだ。
オレたち赤い薔薇とか 1本でも99本でも999本でも平然と渡せやしねェけど、あいつが喜ぶ方法を本当は熟知してる。



「なあ、これから一楽いかねェか……その、なんだ…三人でよ」


ぶっきらぼうに言えば、さっきまで眉を吊り上げていたシズクの顔は 「嬉しい」 たちまちほころんだ。


「ちょうど お昼ラーメン食べたいなって思ってたの」


女は記念日にうるさい生き物で、プレゼントが気に食わないと顔に出るし ランチやデートコースに抜りがあるとすぐご機嫌を損ねるめんどくせー生き物だ。
しかしながらオレの幼なじみは、誕生日の昼もラーメンを好む。
それ以前に、プレゼントではなく祝福されることを一番必要としてる。正確な生まれ日が判らないから、育ての親たる人物と出会った日が“はじまり”として生年月日に登録されてる、シズクにとっては。


その日は珍しく 三人並んで一楽への道へ向かうことになった。


「シカマルもカカシ先生もやっと構ってくれた。最近ずっと二人でじゃれてるんだもん」


「んな表現されると気持ち悪ィからやめろよ…」

「ごめんね。お詫びに好きなだけ奢るから」


オレとカカシ先生が並ぶと何かと面倒だから 当然シズクが真ん中の、うまくいくならび順で。
そうそうお目にかかれるもんじゃない。
せいぜい一年で一度だろう。



トンコツ味噌チャーシュー大盛りに 餃子にチャーハン それと苺のショートケーキってひどい食べ合わせメニューだが、障害物さえなきゃ計画はスマート あとはバレなきゃうまくいく。
あとは一楽裏で待機中のナルトたちが ホールケーキにロウソク並べてスタンバイしてるのさえうまくいってれば、の話だけどな。



漁夫の利御免被ります




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カレーパン様リクエスト【カカシ・シカマル・我愛羅で プラチナ連載番外編、主人公の誕生日に奮闘する三人】でした。
カレーパン様、リクエスト頂き 誠にありがとうございました!



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