▼よかった
なんで近衛部隊の入隊を断ったかなんて決まってる、今以上にめんどくさいことになりたくなかったから。
半分は本当、そしてもう半分は、はぐらかして。
まあ、アスマには全部お見通しみたいだが。
(でも良かった、シカマルが入隊しなくて)
あいつは多分そんなふうに言う、だろう。こんなこと考える自分がばかみてえだ、少し笑えた。
しかし予想外の反応が返ってきた。
「なんで断っちゃったの、シカマルのバカ!」
縁側に寝転んでうたた寝していると、いつの間にウチに上がり込んできたのか、シズクがドタバタと騒々しい音を立てながら近付いてきた。
さすがにがっくりきた。仮にも彼女がこんなこと言うかよ。期待したオレが悪かった。
「火の国直々の指名なんて滅多にくるもんじゃないんだよ?すっごい名誉なことなのに」
「興味ねーし」
「お給料、今の4倍だよ?」
「そんな金持ってても意味ねーだろ」
「…大名警護なら、いつもの任務よりずっと、安全なのに」
つまりシズクが一番言いたいのはそこだろう。確かに要人警護は緊急時以外は暇だし、首都は人手も足りてる。心配症のこいつらしい。
「じゃあお前、オレに首都行って欲しいのかよ」
「え」
「そーとしか聞こえねーんだけど」
「そんなわけない!シカマルが里出ちゃったら一緒にいられないよ、そんなの…あ」
「?」
「もしかしてシカマルもおんなじ?わたしのために残ってくれたの?」
「…いや、それだけじゃねーけど」
「照れてるシカマルかわいー」
自分が支えてくものくらいもう自分で決めてる。この身で守ってくものぐらい自覚してる。周りはめんどくさいやつらばかりで、里を飛び出してる暇なんてない。気になるから。それだけあれば理由なんて十分だろう。
かち、シズクがずっとこちらを見つめているので嫌でも視線がぶつかる。嬉しそうに微笑んだままのシズクに、気づけばしっかりと手を握られていて、オレの肩にもたれ掛かってきた。。
「久しぶりだね、ふたりでまったりするの」
笑いながら顔を寄せて、シズクが耳元で囁いた。
(よかった、これからもずっとこうしてられるね)
憎たらしいがめんどくさい、ここは大人しく従おうと、肩の重みに空いた手を回した。
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