▼木ノ葉崩し

依然として戸惑うサクラに対し、カカシ先生は 説明をしながら一匹の忍犬を口寄せした。

「このパックンが先導する。サクラ、急いでナルトとシカマルを起こしてサスケを追うんだ」

「え、二人を?シズクは行かないの?」

サクラは自分とナルト、シカマルに、わたしを含めたフォーマンセルだと思っていたらしい。

「医療忍者はここの救護活動優先だ」

「ごめんねサクラ。行きたいのは山々だけどー……っと!」 
 
背後から迫ってきた敵を回し蹴りで退ける。奇襲を仕掛けてきた砂と音に対し、木ノ葉は多勢に無勢だ。一般人があまりにも無防備なこの状況下で、どれだけの犠牲が出るかは判らない。

「サクラ、早く二人の幻術を解け!」

カカシ先生が声を張り上げた。

「う…うん!」

サクラはうっすら涙を浮かべてズルズルと地面を這い、ふたりのそばまで近づいた。そして幻術返しの印を組んだ。指が触れた途端、涎をたらして眠っていたナルトがおもむろに半身を起こした。

「ん……アレ?どうしたのサクラちゃ、」

「話は後!!伏せてなさい!」

「え!?」

事態をさっぱり把握できず、目を点にさせているナルト。サクラはそのままシカマルに同様の術をかけようとしたけれど、口を曲げ、かたく目を瞑るシカマルが僅かに眉を動かした。
――シカマルってば、こんなときまでしらばっくれようとしちゃって。

「シカマル……アンタ初めから!」

サクラが呆れたように言うそばで、パックンが横たわるシカマルの足に静かに噛み付いた。

「いってー!!」

「幻術返しアンタも出来たのね!なんで寝たフリなんかしてんのよ!!」

「フン、巻き添えはごめんだ!オレはやだぜ サスケなんて知ったこっちゃ……」

シカマルが不平を言いつつパックンのほっぺを抓っていたようだが、また噛み付かれたのか、「いってー!」また叫び声をあげている。

「な なんだってばよ?コレ!?」

「ナルトうしろ!」

サクラの声を耳にして、わたしは一目散に駆け出した。すきだらけナルトと回り込んだ敵の間に飛び込み、「ええいっ!」その腹にチャクラを込めた渾身の一発を叩き込む。
どんなもんよ。ドゴ、と重い音と共に厚いコンクリートに亀裂が走り、貫通した穴から音忍は落ちていった。

「ボケッとすんなナルト!」

「シズク!!なんだってばよこれぇ!」

ナルトは目を丸くしたままだったが、目の前に現れたカカシ先生に肩をすくませた。

「では任務を言い渡す。聞き次第 その穴から行け。サスケの後を追い合流してサスケを止めろ!そして別命があるまで安全な所で待機!」

「サスケがどうかしたのかよ」

「理由は行きながら話すわ!行くわよ!」

「うわっ!」

サクラは立ち上がり、そのままナルトを担ぎ、壁に空いた穴から飛び降りていった。
音忍はどこからともなく沸いてくるように現れる。
ナルトとサクラを追おうとする敵にクナイを投げながら、わたしは首を逸らして、文句をたれてるシカマルに叫んだ。

「シカマル!みんなをお願い!」

一瞬 目が合う。
シカマルは「ったく何でオレが……」と口をへの字に曲げたまま 急いで穴を潜っていった。三人と一匹を見送った後、わたしはカカシ先生の背中に向かって話しかける。

「先生、これは大蛇丸の仕業なの?」

「ああ。奴はどうやら砂と組んだようだな」

「そんな……!」

「ここはオレたち上忍に任せて、お前は怪我人を看ながら木ノ葉病院へ急げ。じきに大勢が運ばれてくるだろう」

「はいっ」

カカシ先生が瞬身で敵に向かい、わたしも今さっきみんなが出て行った穴から病院へ走ろうと足を踏み出した、そのときだった。
目の前にクナイが一本飛んでくる。

「!」

それは進路を阻むように壁に刺さった。

「行かせないよ」

クナイを放ったのは暗部だった。
面をこちらに向けてひっそりと立っている。この声は―――いや、まさか。そんなはずはない。嫌な予感に手に汗を握る。
敵の指先は、ゆっくりと暗部の仮面に伸ばされて。


露になった人相は、脳裏をよぎった人物に違いなかった。

「カブトさん……?」

「……」

「何してるんですか。早く木ノ葉病院に、」

「あれ?カカシさんから聞いてないのかい?ボクが音のスパイだって」

「……!?」

頭の中で渦巻いていた、胸騒ぎにも似た予感は確信に変わった。こんなの悪い冗談だ。

「ホントに甘いんだなあ、君は。信じられないなら、そこらへんの里民でも殺して見せようか?」

人良さそうな笑顔に影が差し、眼鏡の奥の瞳が怪しく光る。近くの観客席に目をくべると、カブトさんは眠っている観客の首に、事も無げにクナイを突きつけた。

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