「―――って任務だったんスけど」
と、シカマルはややしかめ面で締め括った。
それもそのはず。
冒頭こそ真剣にシカマルの任務報告を聞いていた綱手も 暇をもて余したのか、最後まで話を聞き終えたころには酒瓶を何本か開けている有り様である。
「聞いてたッスか?五代目」
「んあ……?ああ!勿論だ」
綱手には頬杖の跡。
酒の肴にされていた。
不本意だ。
「ご苦労様だったな。まあ、今回は上出来だ!手柄も立ててるし、褒美にホラ呑め呑め!うまいぞ〜」
「イヤ、遠慮しときます」
執務室で酔っ払った末 未成年の忍に酒を進める現役火影など、絡まれたらろくなことにならない。情勢を把握したいと言うから時間をかけて事細かに話して聞かせたのに、一体何のためだったのやら。早く帰ろう。
「んじゃあオレ、この辺で失礼するんで」
「お、帰るのか?まだ話は終わってないぞ?」
「はい?」
振り向けば、小指を立てながらニヤニヤと悪い笑みを浮かべる酔っ払いが鎮座している。
「悩みはつきないだろ?コレの相談も聞いてやるぞ〜」
小指を立てる前時代的なジェスチャーに、シカマルの顔がさっと青ざめた。
件の任務について、五代目火影は隊員それぞれに聴取しているらしい。つまりは大方サクラあたりがぶっちゃけて、任務報告そっちのけで恋バナで盛り上がったのだろう。
これだから女はめんどくさいのだ。
任務報告で全然関係ない弱味握られるとか、最悪だ。
「で?最近どうなんだぁ?シズクとは?」
「…黙秘希望で」
「なんだ、まァだ告白しとらんのか!お前も男なら、押して押して押し倒す位じゃないとあのバカ気づかんぞ〜?」
いや何だよ押し倒せって。五代目、アンタの弟子なんすけど。
「それにこれからシズクは一年、カカシとツーマンセルを組ませるからな、しっかり掴んどかないと、かっさらわれても知らないぞ〜?」
「ハァ!?」
シカマルの受難は、まだまだ序盤である。
夜もとっぷり暮れた頃。マジ帰らせてくださいというシカマルの嘆きが届くはずもなく、シズクは自宅のバスルームで、心おきなく入浴を楽しんでいたとさ。
「イミない努力やムダな出会いとかぁ〜〜♪あ〜るワケないからコブシをかためて でぃーんどーんだぁーん」
ちなみに。
そこでオレがラセンガンぶっぱなして!ズガガガーってなってオッサンが吹っ飛んだんだんだってばよ!そしたらなんか羽みてーなの?がいくつも生えてさ、急に!ビューッってこっちきて!んでもってオレってば影分身しよーとしたんだけどォ、そのままつかまれてぐるっぐるにされてよ!床にバコってなって!でもオレってば諦めねェド根性でさ、でっけー超特製ラセンガンもっかいドガガガガーって、「ええい!!聞くに耐えん!!!」
とある日の火影室からは椅子が空高く蹴飛ばされていった。
あまりに抽象的な説明により、今回の任務の立役者・うずまきナルトの報告は調書には記載されませんでしたとさ。
(完)