▼戦う理由

カジとヌイがそれぞれの寝床に向かった後。オレは感応紙を燃やした“白い火”が気になっていた。
シズクの性質変化が火遁系であることに間違いないが、あれは普通の火遁性質じゃない。サスケが扱う寅の印の豪火球の術系統とは似て非なるもの おそらくは陽遁が火遁に深く結合した特殊な火だ。
無邪気に喜ぶ本人も気づいちゃいないし 謎が多すぎるが、使い方次第では化けそうだと、そう踏んだ。

「三代目から臨時会議の召集がかかった。シズク、オレは一旦里に戻るよ」

「召集?何かあったの?」

「お前は気にしなくていい。今は修行に専念するんだ。明日からはヌイと剣術に励んでくれ。……それと」

言いながら、オレは近くの木から青葉を一枚引きちぎり、シズクに渡した。

「空き時間は性質変化の修行にあてること」

「この葉っぱは?」

「修行のお供だよ。火遁の術ってのは知っての通り、 一般的には寅の印を結んで体内でチャクラを練って、吐き出す瞬間に火に変換する。だが火遁にも色んな方法があってな。ここはひとつ、お前に合いそうな修行法を試そう」

「わたしに合いそうな使用法……」

「お前は掌仙術でのチャクラ放出に長けてる。その行程を火遁に応用するんだ」

「えっと……つまり、掌から火遁を出すってこと?」

「そうだ。第一関門は掌仙術の要領で火性質のチャクラを放出する。で、その葉っぱを燃やせたらクリアだ」

「わかった」

シズクは頷き、オレから木の葉を受け取った。

「ま、性質変化は本来なら何年もかかる修行だ。焦らず地道にね」

木の葉を指先でくるくると回し、シズクは瞳を弓なりにした。

「……ね、カカシ先生。先生が由楽さんの刀をわたしに引き継がせるっていったとき…なんでかなあ。すごく嬉しかったの」

由楽がなんでこのチャクラ刀をオレに託したのか、まだわからない。オレに使ってもらいたいということでもないだろう。
ただ、由楽を守り続けたこの形見を託してみたくなったんだ。
これでいいんだろ、由楽。

「ねぇ、カカシ先生。すごい星だね」

「……ああ、そうだな」

人は死んだら星になるとか今更そんな夢は信じてない。もしそうならオレの大切な人はみんなあっちにいることになる。まあどこだろうど死んでることにかわりはしないのだけれど。
見上げた星空は、シズクの言う通りきれいだった。

「しっかりな」

「はいっ!」


*

カカシ先生が去り、翌日、わたしは息巻いて修行を開始した。
けれど。

「あだっ!いたたた……」

地面に倒れたのがこれで何度目かもわかんない。刀をおさめながらわたしを見て、ヌイさんは呆れたように口をへの字に曲げた。

「ヘボいな」

修行を始めてもう三日が経つというのに、わたしはヌイさん一太刀いれるどころか一方的におされるばかり。受け身に精一杯で攻撃する余裕もなかった。

「ハア、なんで動きが読めないんだろ」

「アンタ木の葉剣舞知らないわけ?」

「木ノ葉剣舞?」

「くのいちクラスで見学するだろうが」

くのいちクラスに出席してるわたしは、寝るか、医学書を暗記してるか、ぼーっとしてるかの三択だった。そもそも授業の殆どをサボってばかりで積極的に参加した試しがない。振り返ろうにも思い出す記憶がないんだ。こんなでよく卒業できたなぁ。

「そんな授業あったんなら、真面目に受けときゃよかった……」

自業自得でしょー!?といのとサクラの怒声が頭のすみっこから響いてくるようで、がっくりと肩を落とす。

「呆れた。木ノ葉のくのいちのクセに知らないんだね。本来武芸である剣舞を、戦闘任務で用いるために改良されたのが木ノ葉剣舞なわけ」

「そっか。翻ったり回ったり動きが独特なのは舞由来だったからかぁ」

「相手に攻撃が入ったように見せかける。逆もまた然り。独自の動きで翻弄して主導権を握るんだ」

「すごいやりにくかったのはそのせいかぁ……じゃあヌイさんに勝つには、剣術をつめるか、剣舞の動きに慣れるしかない?」

「ハッ、アタシだって実践で使えるまでに数年もかかってるわけ。時間のないアンタにゃ慣れるのはムリだ。あきらめな」

彼女は吐き捨てるように言った。あきらめな。最後のことばが胸を貫き、背中をどんと押し出す。

「何回やっても無駄だってわかんないわけ?」

「ムダなんかじゃない!絶対一太刀いれてみせるっ!」

「バーカ。何の事情があるかはわかんないけど、そんなにあの刀が欲しいわけ?あたし如きに勝てないんじゃ師匠が刀を精製するわけないよ。他をあたりな」

「わ、わたしには戦う理由があるんです。必ず勝つって約束した。だからあなたにも負けられない」

ここでへばってたんじゃ決意も約束も果たせないよ。みんなあんなにボロボロになるまで立ち向かったんだ。わたしだって。

「まっすぐ、自分の言葉は曲げない…これは、仲間の請け売りだけど。わたしもあきらめない」

「……呆れた」

「ヌイさん、もう一度おねがいします!」

剣舞と、火遁。両方を組み合わせれば確実に何か次に繋げられるはずなんだ。わたしは立ち上がって、服の土を払い落とし、もう一度短刀を構えた。

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