▼休日謳歌譚

16歳の休日の楽しみかたっていったらなんだろう。好きなひととデートすること? ともだちと街で遊ぶこと?
それもあるけど、私はね やっぱりこれです これ。


「ん〜〜っ 気持ちいい!」

ざぶん。
肩まであつい湯船に浸かれば、思わずため息がでちゃう。はあ、うっとり。このなめらかなお湯に包まれたら、夜通し書類整理に終われた疲れもたちまち消し飛んじゃうもの。まさにここは極楽。

「もー銭湯ってさいこ〜」

「ほんとよねぇ。ハァ〜 任務後のお湯は五臓六腑に沁みるねェ〜」

「シズクもテンテンさんもオッサンくさいよそれ」

奇遇なことに、木ノ葉銭湯の前でどういうわけか同期やネジ、テンテンさんとばったり遭遇して。さらについてることに、偶然にもいま女湯は貸し切り状態。
こんなラッキーなことがある?普段任務にがんばる私たちに、銭湯の神様がご褒美をくれたんだ きっと。

「なんか楽しいね。女同士でこういうの」

「私たち合同任務になることはあっても一緒にお風呂入りに来たことなかったわね」

「これが裸の付き合いってやつだ!」

「だからオッサンくさいってシズク」

ちゃぷちゃぷ。の〜んびり手足を伸ばしながら、すっかり我が家気分でくつろぐテンテンさんとわたし。それに引き換え、ヒナタはなんだか恥ずかしいそうに肩をすくめ、しきりに体を隠そうとしてた。そういうシャイなとこもヒナタらしいな。

「ヒナタ、別に恥ずかしがって隠そうとしなくてもいいよ。女同士なんだし もっとゆっくり湯に浸かりなよ」

「う…うん……」

ヒナタは頷いてはみせたけど、頬を染めながらいっそう深く湯船に浸かった。

「!?」

その動作で我々は目撃してしまった。お湯から、そしてヒナタの白い腕から はみださんばかりにみっちりと 見るからに柔らかそうな膨らみがのぞいていることに。

―――――で、でかい。

「な……何か…浮いてきちゃって……」

湯煙でも隠せないヒナタの谷間に私たちは思わず釘付けになる。

「スゴーイ!ヒナタ成長しすぎィー!」

「そんな 声 おおきいよ……!」

いのの声が女湯に大きく反響し、ヒナタは茹で蛸のように真っ赤になってしまった。
前々からヒナタって発育のいいなと思ってたけど、いつものゆったりした忍服を着ててよくわからなかった。まさかここまで……っていうか、胸って……風呂で浮くんだ。
ヒナタを茶化すいのだって スタイル抜群だしなぁ。
胸の平らな私やサクラは怖じ気づいて口元まで湯に浸かる。
やっぱり気になるよね。年頃の女の子だし。
ましてや好きなひとがいればなおさら。

あれくらいおっきかったら、シカマルは喜ぶかなぁ……

「ヒナタ 胸ってどうやったら大きくなるの?」

「えっ………?私はなにも……」

「ほんとに?食べ物に気を使ってるとか」

「う、うん 何も……」

ヒナタに秘訣を聞き出そうとしていると、いのがニヤニヤしながら、今度は私のほうにズイと体を寄せてきた。

「シズク〜アンタずいぶん食い付くじゃない」

「そ そんなことないって」

「ハイ嘘〜!ヒナタの胸ジロジロ見てるくせにィ」

「いのだってジロジロ見てるじゃん!」

「あ!シズクもしかしてぇ バストアップしてシカマルの気ィ引こうとか〜?」

「なっ」

しまった。ほんの冗談混じりの一言に、完全に墓穴を掘ってしまった。 

「図星ねェ」

と、いのは悪い顔をしている。

「胸って揉まれるとおっきくなるとか聞くじゃない?あれって男の妄想かと思ってたけど 実際のトコどうなの?」

「ウソっ、シズク シカマルとそんなに進展してんの!?」

「え、い、いや!いやいやいや!」

「どうなのよ。正直に白状しないと怖いわよ?」

「ていうかアンタたち付き合ってたの!?私聞いてないんだけどー!」

「ちょっ テンテンさんまで」

「こうなったら実力行使よ!秘術 こちょこちょ攻撃!」

「やっ もう、いのっ、サクラも!くすぐったいてばぁ!」

忍の技を磨き、日々鍛練を積むくノ一の私たちも、こうして休日に集まれば、ただのうら若き乙女たちなのです。

* * *


女っていうのは、変に鋭いわ何かと口煩いわ、一緒にいると骨が折れるわでめんどくせー生き物だ。
ウチの親父に言わせりゃ“世界は男と女で出来てる”らしいが、そんな世界にも、男と女とを分けるセーフティな場が一応ある。ここ 銭湯だ。
だが今日ばかりは、男湯の平穏は崩れていた。


「スゴーイ!ヒナタ成長しすぎィー!」


女湯からキャッキャと聞こえる声。
あいつら、向こうの声がこっちまで筒抜けだってことに気付いてねェな めんどくせー。
貸切状態の男湯は、うっかり黙って女たちの話に耳を澄ませてしまう“いけてねー派”のオレたちで溢れていた。

「ヒナタが成長しすぎねェ………だよなァ」

湯に浸かったキバが ぼーっと真上を見ながらぼそりと呟いた。
普段任務で一緒になりゃ男だ女だ関係なく戦ってるが、オレたちももう十六だしな。

「キバ、お前ふしだらなことを考えてるな」

「アンタはいーよな〜ネジ。白眼で透視できんだもんな」

「な、何を言う!」

尊厳を傷つけられたのか、若しくは自分でもそういう使い道を考えたことがあるのか、いやに過剰反応だな ネジ。まあどっちにせよオレにゃ関係のないことだし、せっかくの銭湯だ ゆっくり浸かって……


「あ!シズクもしかしてぇ バストアップしてシカマルの気ィ引こうとか〜?」


は?おいおい、なんでオレの名前が出てくんだよ。

「ホントかよ!?シカマル」

聞き耳を立てていたキバはニヤリとほくそ笑み、オレのほうに顔を向けた。ハア、とため息をひとつ。ったく、静かに湯に浸かってたってのに。
つーか、バストアップしてオレの気を引くって、なんの計画だよそれ。

「答えろよシカマル!」

「なんでオレに聞くんだよ」

「お前触ったこと位あんだろ!?」

「マジでめんどくせー……」

なんとしても黙秘権を行使してえ。だがオレの願望とは裏腹に、女どもの会話はだんだんヒートアップしていって。

「胸ってさぁ、揉まれるとおっきくなるとか聞くじゃない?あれって男の妄想かと思ってたけど 実際のトコどうなの」

「ウソっ、シズク シカマルとそんなに進展してんの!?」


いのたちの尋問をシズクが上手いことかわせるわけもねえよな。問い詰められて困り果ててるアイツの顔、嫌でも頭に浮かぶぜ。

「進展だと!?どうなんだシカマル」

「アンタもかよネジ!」

口が裂けても言わねェっての。
……それにだ。どうなんだっつっても、どうにもこうにもって感じだ。
覚悟決めてようやく一線越えた仲になったが、関係が深まったのはそれきりで、アイツは任務に医療班にてんてこ舞い。オレも仕事量が増えたし、デートどころか、非番が重なりすらしねェ。
今日 木ノ葉銭湯の前で鉢合わせして、しばらくぶりに顔を合わせたぐらいだからな。
とりあえず白を切り通すか……

「あー、いい湯だったってばよー」

やおら、ナルトの声がこっちの会話を遮った。
お前 体洗い終わっただけで、いっぺんも湯船に浸かってねェだろうが。やけにわざとらしい言い方をして、ナルトはそそくさと風呂場を後にした。

「ナルトのやつ女湯覗く気だな」

「ああ そのようだ」

「ったく懲りねえヤローだな!今の女湯 ビンゴブックよりヤベーメンツぜ」

キバの言う通りだ。今の女湯は秘密の花園どころか怪物共の魔境 五代目が五人に分身してるようなもんだ。覗きがバレりゃ再起不能なまでにボコボコにされるに決まってる。
その危険を省みず挑むんならむしろ感心するが やっぱ、ただのバカだな。

……けど、あいつも居るんだったな。

一糸纏わぬシズクがナルトと鉢合わせするシーンを思い浮かべちまうと、それはそれで難儀で。ったくめんどくせー。

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