▼Home Sweet Home

オレとサスケってば傷だらけで腕もなくなっちまったしで、カカシ先生はカカシ先生で相変わらずバテちまってる。サクラちゃんのことも、また泣かしちまった。こんなけど、今は呆れて笑ってんだ。
なんかさ、思い出すよな!任務帰り、いっつもこんな感じだったって。
色々難しいことばっかだ。この戦争で、みんなの大切な奴らもたくさんいっちまった。昔には戻れねェ。なんとかしなきゃなんねーことも、たくさん残ってる。
でも、つれェけどすげー嬉しかったんだってばよ。
オレたちはやっと和解の印を結べた。第7班がまた集まったんだ。

サスケェ、お前たしかに言ったよな。
家族って。
そうだろ?なら一緒に帰ろーぜ、みんなの家に。
さっきの雨、みんなにも見えただろ?
シズクも待ってる!



里への帰り道、チャクラのツバサで飛んできたシズクが空から舞い降りたときね、私 嬉しくてまた泣いちゃった。
どうかサスケ君が戻って来ますように、第7班が元に戻りますようにってずっと願って信じてたけど、心のどこかでいつも不安だったの。ナルトがどんなに頑張ってもサスケ君は変わってしまった。それはカカシ先生も治せない。私にも治せなかった。シズクが命を落とした数日前に、これで本当に旧第7班は揃わないという現実を突き付けられて。詳しいことは分からない。
でも見て。シズクが帰ってきたわ。
きっと私たちまた笑えるの。

一度萎れた新芽、大切に育てなきゃ。もう二度と枯らさないように。ぜったいきれいな花になる。あなたの心にも、いつか届いとくれるといいな。
ううん、違うわね。
私がしっかり届けるわ。



オレは左腕を ナルトは右腕を失った。
思い返せばこれまで、家族や仲間 形のないものの多くを失ってきた。かわりに痛みを受け取った。
だがそれはオレだけに当てはまるわけではなかった。はじめて胸の内をさらけ出すと、ようやく目が覚めたような気がした。
なくした部位を見て、自分の能力を用いれば再生できるとシズクは提案した。オレたちはそれを断った。この傷すら失うわけにはいかない。忍術の印なら二人いれば結べる。
一人じゃなければ。

どうすれば皆が幸福になれるか?誰もが望んでもその問いに答えられる者はいない。
オレは間違ったが、この眼で、今ならば真の意味で世界を見渡せるだろう。答えを見つけることは不可能じゃない。
何事も元には戻らない。
だから新しい本当を探せばいい。



出会って去っていった、すべての忍たちが言うだろう。
お前たちには残された時間があるんだから、大切にしろと。
間違ったっていいんだ。何度も何度も失敗を繰り返して、迷い続けることもひとつの答えになるから。戦争は終わった。次の時代が来る。お前たちはお前たちが信じる忍道を歩けばいいんだ。その轍が新しい忍道を築いてくんだ。

共に生きよう。
これからの木ノ葉を、それぞれの忍里を、みんなで作っていこう。忍たちに本当の平穏が訪れる日々を夢見て。
だいじょーぶ。遠く離れても 見えるだろ。五人ぽっちじゃない。オレたちを一つに結ぶ絆。里を越え、国を越えてオレたちは手を取り合っていける。
傷が癒えたら出発だ。



ナルトとサスケは腕の再生を望まなかった。
二人には、二人だけの答えがあるんだろう。もしかしたら、これから探しにいくのかもしれない。

忍の世界は夢と涙だらけ。悲しいことは果てしなく広がってる。会いたい人の顔が浮かんでは消える。
でも想像もしないようなものがまだいっぱい待ってるんだ。
ねえ、見てみたいと思わない?私たちの知らないもの全部。

そこに何が待ってても恐れはしない。何十回ふりだしに戻っても、祈るように信じて、探してればいつかは見つかる。一緒に空を見上げて、おんなじ星を見てて。想い続ければ変えていけるよ。
みんなで育てたい。はじまる世界。
いつか来る、みんなが幸せな世界。
でも私たち、待ってるだけなのは、性にあわないね。


五つの里、それぞれの帰路についた忍たち。
彼らの家族や恋人、仲間の帰りを待ちわびた民たちが、里の正門まで詰め掛けていた。火の国木ノ葉隠れの忍たちは赤漆に黒く輝く「あ」「ん」の文字を目にすると足取りを早め、最終的には駆け足で木ノ葉の門をくぐった。
はじまりを意味する扉のもと、笑って泣いて抱き締めて、再会を喜んでいる。

喧騒を抜けてシカマルとシズクは家路を辿る。黙々と歩みを進め、ついに目前まで来ると、シカマルは軒先で足を止めた。
シカマルの目は生家を感慨深く眺めているようにも見えるし、どこか躊躇しているようでもあった。
屋敷の中ではシカマルの母が帰りを待ちわびていることだろう。この家を発つときには三人全員で帰ってくると約束をしていた。
今は二人。
約束は果たせなかった。

佇むシカマルの横顔を見、シズクは相手の手にそっと自分の手を重ねた。大丈夫の呪文のかわりに微笑んで。

「おとうさんがどんなに立派だったか、おかあさんにたくさん話そう」

「…ああ」

一緒なら悲しみも乗り越えられる。
固く手を握って二人は同時に踏み出した。石畳の階段を登り、シカマルが戸を引いた。

「ただいま」

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