▼コネクト

(一緒に見ていてくれ。今度こそあいつらを……世界を守る!!)

チャクラが実体として発現する写輪眼最上位の術“須佐能乎”。
その風貌は術者により異なる。
イタチは女神。サスケは陣羽織を纏いし武将。マダラは二面四腕を持つ阿修羅。また、四腕の鎧武者にも変容する。
そしてカカシの須佐能乎体は、左眼に縦に走る傷を持つ天狗であった。

「カカシ先生!?」

須佐能乎はサクラを掌に掴むと大きく飛翔した。

「バカな……そんなハズが」

サスケが凝視する先、カカシの両眼には万華鏡写輪眼の赤が灯っていた。

「コピー忍者 写輪眼のカカシって言うぐらいだからな!!先生ってば!」

カカシの須佐能乎は、オビトの写輪眼を使って発動されるため、オビトの須佐能乎といって過言は無い。
天狗に刻まれた傷は、カカシの目に走る傷。カカシがオビトを守り盾となった過ぎし日を彷彿とさせる。須佐能乎体は、オビトにとってカカシが英雄であることを示していた。


神威手裏剣!!

オビトが仙人化していた影響で、瞳の能力は更なる高みへと昇華していた。手裏剣の触れた部分から時空間へ飛ばされ、カグヤの触手は切り落とされる。


「ウオオ!サスケのよりスゲー!!!」

地から吹き出すチャクラがカグヤに取り込まれていく様子を、サスケはその眼で感知していた。
チャクラは無限月読に眠る忍たちのもの。こうしてる間にも人々が餌食になり、戦いが長引けば余すことなく吸い上げられてしまう。

「風火土雷水。陰陽すべての性質を合わせた、血継網羅の膨張求道玉」

作り出されたチャクラの求道玉は、何にも比較し得ない過去最大の質量を保ちつつ、ゆっくりとナルトたちに近づいていた。


「新たな空間の始まりだ。お前らはその犠牲となるのだ」

カグヤは完全体に王手をかける。

「さすがにあれほどの大きなものを神威で飛ばせない。オレ達が時空間へ飛んで一旦逃げたとしても…アレが大きくなり過ぎれば当然もう戻ってこられなくなる」

「アレを止めるには……」

「本体のうさぎババアを 今すぐ封印するしかねーって事だ」

「だよね」


この戦争は忍界の歴史に潜む因縁全てに決着をつけるための戦争。最後の最後にこうして弟子たちと共闘する結末を、カカシは予想だにしていなかったが、今は素直に嬉しく思えた。


「集まれ。作戦を伝える。これがオレ達元第七班としての最後の任務だ!」


第七班のひとりが木の葉隠れの里を抜け、早数年。希望を抱きながらも、サスケが去った後はもう二度と揃うことはないかもしれないと、皆の心のどこかで不安の影が差していた。
一人欠けた。それは事実。
しかし第7班はこうして再び、同じ方を向いて立ち上がれる。
この先、自分たちはまた方角を違えるかも知れない。それぞれの理想のもと、新たな道を歩みゆくことになるだろう。泣いても笑ってもこれが分岐点。
つまりこれが最後の任務。


「オレ達で世界を救うぞ!」

「フン」

「オウ!!」

「了解……!」



先生、私も闘いたい

四人の耳に決して声が届くことはなかったが、その空間には目に見える変化が現れていた。

「カカシ先生、見て!」

サクラが最初に異変に気づき、頭上を指さした。天狗の形相をしていた青色の須佐能乎から色が抜け落ち、高い鼻は縮み、物々しい武者鎧も消えて段々と滑らかになっていく。

「須佐能乎が変化してるだと?」

サスケの脳裏に、うちは一族の石碑に記されていた、うちはの力を強化する第三の存在が過った。
須佐能乎とはいわば術者の守人の体現であり、オビトの須佐能乎から、正真正銘のカカシの須佐能乎へと移り変わったことを意味している。
チャクラ体は白い光りを放ち、たゆたう絹衣と長い髪を形づくる。伏せられた瞼に、右手の忍の刀。左手には薬壺。
天女を彷彿とさせながらも、その顔立ちは四人にあまりにも馴染み深かった。
サクラはきゅっと唇を結んで笑い、サスケは僅かに口角を持ち上げた。ナルトは変化した須佐能乎体に向かって親指を空に向けて押し上げて。


「おせーってばよ!待ってたぜ!シズク!!」


うん

約束通り彼女は最後までそばにいる。
これで全員が揃った。


無事に帰れたその時は、カカシの弟子たちは巣立ち、新たな場所へ赴くだろう。
たとえ離れ離れになろうと、五人を結ぶ第七班という強い糸。このつながりさえ手繰り寄せればどんな奇跡も起こせる。時に道を見失ったときには、それぞれが灯台の光のように導くのだ。
まちがいだらけでも進むように。恐れず、幸せになる未来を結ぶために。

「行くぞ」

対する大筒木カグヤは繰り返す。出口のない迷宮を何度も何度も巡りようやく辿り着いた。

「ワラワは不死。どちらか一方が死ねば封印はできぬ さて…どちらにする?」

カグヤは灯台の灯りを打ち消す嵐。千年の月日を経て訪れた好機を逃すことは許されない。
封印の鍵が転生者二人に託されている。転生者のうちどちらかを亡き者にしさえすれば、カグヤは念願に手が届く。

「オレが相手だコノヤロー!」

「イヤ一緒に攻める!奴は封印を恐れ注意力が二分される」

邪魔者の一掃を決めたカグヤは、共殺の灰骨を取り出し、ナルトとサスケではなく写輪眼のカカシに向けた。

「母さんは力を得たばかり……威力もスピードも段違いになってんのさ」

力を増したスピードには間に合わないと慢心した黒ゼツの期待は直ぐに裏切られることとなる。死神の骨はカカシの体をすり抜けた。

「!?」

「やはりいい能力だなオビト。すり抜けるのは…そしてこの技も復活だ」

「母さん!!」

神威雷切で宙を舞う右腕。手負いのカグヤの両脇にはナルトとサスケが迫っていた。時空間へ逃れる余裕が無いと察したカグヤは左手から灰骨を飛ばし攻撃の矛先をナルトへと向けたが、現代の忍の教えをカグヤの頭は知らない。
ナルトは影分身、同じくサスケもナルトの変化である。

忍は裏の裏を読むべし。

「どちらもアシュラの転生者か」

あの時すでに変化していたのか。負傷した右手も使えず、カグヤは開いた空間の裂け目から再び灰骨を繰り出した。たった一人で戦うカグヤに手を貸す仲間はいないが、忍たちは小隊を組んでいる。カカシが神威で灰骨を消し去り、身を隠していたサスケが素早く立ち回る。あと一歩でこの腕は届く。

「まずい…氷の空間へ…いや、インドラの転生者には天照が…それはダメだ!!」


上へ逃げようとしたカグヤ、しかしそこには、くの一が一人待ち受けていた。

「私だっているんだ!! 同じ女なら――バカにしないで!!!」

右をナルト、左をサスケ、上方をサクラの陣形。加わるように、カカシの須佐能乎体は右手の刀を掲げ、刃に白い炎を纏わせた。


あなたも人の母なら、お願い、わたしたちを信じてて


その炎はすべての成長を早め土へとかえす円環の炎。チャクラ体の髪を揺らし、シズクは矛先をまっすぐに見定めてカグヤの胴の中心を貫いた。

何と頼もしく誇らしいことか。幼き日のちいさな種たちは大輪の花を咲かせた。カカシは微笑むと、四人の弟子の勇姿をしっかりと目に焼き付けた。


「今のお前らは――――大好きだ」

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