▼君はおひさま

「では、次の試合です」

新しく名前が切り替わったとき、となりにいたナルトは一瞬ポカンとした表情を見せた。

「来たァ来たァよっしゃー!!おまたせしましたァ!やっとオレの出番だってばよォ!!」

「うっひょおおラッキー!あいつなら確実に勝てるぞ赤丸!!」

「ワン!」

やっとナルトの番がきたけど、問題の多い試合になりそうだなあ。

*

「では、はじめて下さい!」

キバが四脚の術で先手を打つと、弾き飛ばされたナルトは壁にぶつかった。

「やっぱな!」

「あのナルトがキバにかなうわけないわよねー……」

「なんだ弱えーなあいつ…」

今のナルトを知らないみんなはそう口々に呟いていた。万年ドベ、落ちこぼれのナルトがキバに勝てるわけないって。

でもわたしたちは知ってる。
サクラもカカシ先生を振り向くと笑って頷いた。ナルトはかたひざを立て、キバに対峙した。

「オレをナメんなよ!!」

修行も中途半端で、ナルトがうまくいったためしなんてなかった。でもそれは、昔のナルトだ。あきらめないのが今のナルト。変わったんだ。
今のナルトは苦手なものからも怖いものからも敵からもぜったい逃げたりしない。キバの得意忍術を前に再び倒れても、何度だって立ち上がる。


「行けー!!ナルトー!!」

「ナルトの本気見せてやれーっ!!」

「後悔すんなよ…!行くぞ赤丸!!」

「ワン!」


ナルトの根性を 信じずにはいられない。

「この辺が実力の差ってやつだ」

「オ…レは…火影に…こんな…ところ…で…」

「お前が火影?このオレより弱いのにかァ!?お前本心じゃ火影になれるなんて思ってもねーくせに強がってんじゃねー!クク…火影ならな!オレがなってやるよ!!」


「ハァー!なんでシズクってば組み手そんなに強えんだってばよーっ!」

「あっはは、わたしはアカデミーに入る前からビシバシ鍛えられてたからね!」

「ちっくしょーっ!!もう一回勝負だ!」

「いまのでもう七回目だよ?休憩いれようよ」

「シズクに勝つまでやってやるってばよ!!」



きみはおひさま。太陽みたいだと思う。ぱっと世界を照らす。何度だって立ち上がってそのまっすぐな瞳で照らしてくれる。

「ナルトはぜったいに勝つもん」



「あのさあのさ、おれってば火影になんのが夢なの!」

「ほかげって、三代目のおじいちゃんみたいに?」

「そ!オレが火影になったら特別にシズクをつきびとにしてやってもいいってばよっ!」

「ええー、やだ」

「なんで断んだよココでェ!」


あのときはちゃかしてしまったけど、わたしは信じてる。
ナルトは必ず火影になる。
わたしたちも、もちろんナルト自身もそう信じてるの。


「立てー!!ナルト!!!」

その言葉を嘘にしたらただじゃおかないんだからね。
今はみんなが見てる。
みんなが認めてる。

「オレと火影の名を取り合ったら…お前ェ、負け犬になンぞ!!」

「オイ…何度も何度もしつけーやろーだな」

「オレのとっておきの新必殺技でケリつけてやるってばよ!!」



「え?そんなのいつの間に…?」

「もしかしてハッタリ?」

うォォォ、と叫び印を組んでチャクラをためているナルト、キバが素早くその背後をとった。

「くらえー!!」

キバの一撃が決まるかに見えたその瞬間、会場にまぬけな音が響いた。

プゥ〜

「……あははははっ!!」

「シズク笑いすぎよ!」

「だっておならって、ナルトらしー!っあっはは!」

「くっそー!力みすぎた……。けどこっからが新技の見せどころだってばよ!!今までやられた分一気に返すぜェー!」

う!ず!ま!き!ナルト連弾!!

キバの能力を逆手にとり、僅かな油断が生まれた。その隙を逃さなかった。
ナルトはサスケの体術を見てヒントを得ていたのだろう。影分身を使い、渾身の蹴りをキバ相手に叩き込んだ。
高らかに宣言された名は。

「勝者、うずまきナルト!!」

「いいぞーナルトー!!」

「オオオー!!」

「しゃーんなろー!いい感じー!!」

「あのナルトがキバに勝ちやがったぜ!」

みんなの反応をみたらなんだかわたしまでうれしくなっちゃった。

「ナイスファイト!」


*

担架を運ぶ手伝いをしていると、キバが不機嫌に顔だけこちらを向けて話しかけてきた。

「シズク、お前医療忍者の見習いなんだろ!はやく治せよ」

「負けて落ち込んでるの?」

「つべこべうっせーな!試合見に早く戻りてーんだよ!」

電光板に示された名前、ふたつのヒュウガの文字。

「……日向一族同士の試合ね」

単なる偶然か運命の悪戯か、どちらにしてもこれから嵐を巻き起こすことに変わりはなかった。

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