▼影送り

声が出ねえ。頭が重たくて意識は判然としねェ。体も頭も、笑っちまうくらいいうこときかねー。
あーオレ、十尾にチャクラ吸われて死んじまったのか、って。今までの記憶が走馬灯まで見えてた。

けどその記憶は、オレのものじゃなかった。
オレが映し出されてる 単純なことだ、これはオレの記憶じゃねェ。誰のものかなんて、今更考えるまでもねェけど。

出会ったあの日のやわらかな風。縁側でふたりして見上げた綿雲が、ぐんぐん流れていってたっけな。お前はあんとき、そんな気持ちで空を見上げてたんだな。
葬式のあとにあるいた彼岸花の道。
中忍になった朝。
サスケを連れ返せなかったときの、病院でのやりとり。
忍を辞めるっつって、里を飛び出した真夜中。
はじめてキスをした夜、縁側から見えた月。
洪水のようにあふれてくる記憶に、必ずオレが映し出された。オレの見た景色と交錯しながら、ほんのすこし、風景の角度が違う。それは信じらんねえ位一緒に過ごしてきた証拠。

これはオレの、好きなヤツの記憶だ。
オレだって同じだけ、いろんなとこからアイツを見てきた。笑い泣くアイツの全てをオレが知ってる。


なぁシズク、お前、こんなたくさん残ってんだな。


暗がりに瞼を開くと、まだ朝が来てねェことだけ理解できた。痛覚も麻痺してるが、不思議と寒くねェ。これは多分、チャクラに包まれてるからだ。
このチャクラ、ナルトだろ。
まったくお前はいつもそうだ。無理ばっかりしやがって。オレ達の為にどこまで、今までだって、オレらのこととなると手抜きも妥協もしねーから、オレもお前の前でめんどくさがったりできなくなっちまっただろ。

オヤジ。
シズク。
悪ィ。
オレはまだそっちに行くなって、ナルトがよ。

シカマル、わかってる。私はここにいるよ。あとは頼んだからね。いってらっしゃい


「シカマル!今はしゃべらないで!アンタは絶対に死なせない!!ナルトが……皆が必要としてんだから!!」


ナルトは今まで1人で辛ェー事くさるほどやり抜いてきた事、オレは後で知った。もう今はそんな思いをアイツにこれっぽっちもさせたくねェ。とにかくそう思いたくなんだよ、あいつと一緒に居るとよ。
昔一度、オヤジにゃ言ったよな。あいつはこの里にとって大切な忍になる。ナルトといるとオレはあいつと一緒に歩いて行きてぇ、そう思わされんだ、ってよ。
初代様と違って、ナルトのあのバカヤローに相談役の二代目様のようなできる兄弟はいねーしな。
まぁ、だから、だからこそ。 あいつが火影になった時、オレがあのバカヤローの隣りに居てやらねェーとよ。
わかるだろ?ナルトの相談役にオレ以上の奴はいねーからよ。

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