▼ROAD TO NINJA(上)

(このお話は劇場版ナルト・ROAD TO NINJAをもとにしています。映画の微ネタバレを含みますので、ご注意ください)








どうしちまったんだ。深夜、電灯が照らす下でナルトは呟いた。
例のグルグル仮面と遭遇してから何だかおかしくなっている。同期のやつらは皆いつもと違うし、自宅のドアを開けばそこには見知らぬオバチャンのタオル姿が。
一体何が起きているのかナルトには見当もつかなかった。

それに、気になることがもうひとつ。


「…なんでシズクがいねーんだってばよ…」



“シズク?誰だソレ”

“そんな子いないよ”

“寝惚けてるんじゃねーの、メンマ”


サスケはチャラいし、サイは絵ェ下手くそだし。シカマルはアホでチョウジは痩せてて、いのはなんか大人しい。反対にヒナタは綱手のバーチャンみたいになってて、キバは犬嫌い、シノは虫嫌い。ネジの班もやっぱみんなヘンだ。


「でもシズクがいねーのはもっとヘンだ…」

行方どころか、そもそも誰に聞いてもみんなシズクを知らないのだから。




現状の違和感を共有するサクラも自宅に帰り、あまりの途方のなさにナルトが溜め息をついていた、その時、


カアンカアン。

「鬼子が出たぞーーっ!!」


里の見張り台から警告を知らせる鐘の音と叫び声が暗闇に轟き、ナルトは咄嗟に立ち上がった。

「へ!?おにご?」

キョロキョロと辺りを見渡すと、家から通りに出てきた忍の何人かが里の中心部に向かって腕を突き出す。

「あそこだ!」

「顔岩にいるぞ!!」


つられてナルトは指差す方向に顔を向ける。遠目では目視しづらいが、初代火影の顔岩の頂きに誰かが立っている。鬼の面を被り、小刀を手に。

「何だァあれ…?」

そのシルエットに既視感を覚え、思わず目を細めた。すぐ脇を走っていくチョウジとシカマルを呼び止め、ナルトは問う。

「あ!あのさ、鬼子って?」


「あれ、メンマ知らないの?鬼子だよ。時々木ノ葉の里に降りてきて、火影様を狙って襲撃してくる例の!」

「綱手のバーチャンを襲撃…?」



鬼子と呼ばれた何者かは岩壁をするする伝い地上へ降りると、脱兎のごとく里の中央へと駆け出した。警鐘に応じて出動した小隊が武器を放つもいとも簡単にかわされてしまう。火遁のあとに立ち上る煙を抜け、鬼子は獣のようにまっすぐに走る。目指すはおそらく火影邸だ。


「させるかァーー!!」


青白い光に照らされた銀髪と口布。新たに前線へ出た小隊の中に、ナルトは見知った姿を見つけた。

「カカシ先生ェ!?」

やたらアツいし気合い入ってる、と奇妙に思ったのも束の間、カカシの放った遠距離の雷遁が炸裂し、鬼子は火影邸を目の前に仰向けに倒れた。誰かがすかさず叫ぶ。

「やったぞ!カカシさんが仕留めた!」

「何だってばよ…?」

雷切が直撃したことで仮面にヒビが入り、鬼子の形相が露になった。

「…え!!?」

その顔立ちは、鬼と呼ばれるには程遠い。まだ大人とは言えない少女の、伏せられた睫毛。くるくると寝癖のひどい髪。それはナルトが、たった今しがた思いをめぐらせていた人物で。


「シズク!?」


なんだこんなガキだったのか、と大人の忍がシズクの髪を乱暴に鷲掴みにした。シズクは気絶していて意識はないが、苦しげに眉を寄せている。


倒れたシズクをぐるりと取り囲む忍、そのクナイの矛先が彼女に向けられている。事態を把握してなくとも、どんな状態か位はわかる。

「止めねーと!!」

駆け出そうとしたナルトの行方を、チョウジが腕を伸ばして遮った。

「何してんのメンマ!」

「そっちこそ何すんだよチョウジ!あれシズクだろ!!…なあシカマル!!」

賛同を求めてナルトはシカマルに振り返ったが、当のシカマルは鼻をほじくりながら、能天気に星空を眺めていた。


「あー?シズクって誰だー?」

「…っ何なんだってばよ、もう!」



ナルトは声を荒げてチョウジの拘束を無理矢理ほどき、騒ぎの中心へと瞬身した。考える前に先に体が動いていた。片手に作り出した大玉の螺旋丸を誰にもぶつけることなく空中で破裂させると、その勢い凄まじく、シズクを囲んでいた忍が円を描くように外側へと吹き飛ばされていく。その隙にナルトは横たわるシズクを抱えると、ドロンと木の葉を舞い上げて行方を眩ませた。

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