▼標的

サクラといののケガの手当てをしてるうちに、次の試合が始まっていた。木ノ葉隠れのテンテンさんと、砂隠れのテマリというくのいち。
結果は砂のテマリの圧勝に終わった。戦法の相性が大きく関係していたとはいえ、砂の忍はかなりの手練れだった。
砂からの本戦出場者は、これで二人目。

「待ちくたびれたってばよ!そろそろオレの出番ーっ!!」

クールな砂忍たちに比べてみると、手すりに掴まってバタバタ暴れるナルトって、随分こどもっぽく見えるかも。

「あ!やっと戻ってきたってばよ!シズク!なあなあ、サクラちゃんとサスケおバ……イノのケガ、どうだ?」

「もう大丈夫だよ。二人ともタフだよねぇ」

「そっかそっか!」

ナルトの傍らに並んで、電光掲示板が切り替わるのを待つ。ぱっと変化したキリュウ VS はがねコテツ、の文字が浮かんだ。

「あ」

湯隠れのアイツだ。

「第三の試験は通過者が奇数となったため、人数調整で木ノ葉の試験官を導入します。ゴホッ……もちろん下忍レベルに合わせて試合は行います。異存はないですね?」

そう説明し、ハヤテさんは湯隠れの忍に視線を移した。今まで物音ひとつ立てず、動きもせず潜んでいたその男は 瞬身で中央のリングに移動した。

「それでは 始めてください」

ハヤテさんの合図と同時に、コテツさんは手裏剣やクナイ、体術と、基本的なスタイルで攻撃を仕掛け始めた。キリュウは避けもせず、自分の体の前で軽々と武器具を受け止めている。
奴が攻撃する気配はない。それどころか、最初に瞬身して降り立った場所から数歩と動いていない。

「木ノ葉の忍をなめんなよっ!」

その態度がカンに障ったのか、コテツさんは苛立ち混じりに、巨大な武器を口寄せした。
鋭いトゲが幾重もある、鎖つき特殊棍棒。一撃食らったらひとたまりもなさそうな鈍器を、キリュウの目の前で振りかぶる。

「もらったァ!」

けれど、使い手を離れ棍は宙を舞う。次の瞬間、ふわっと髪が揺れて、耳元には爆音。サクラとナルトが叫んで飛び退いた。

「キャーーッ!!」

「うわあっ!!」

棍がめり込んだのは、わたしが凭れるすぐ左、首から数センチ先の壁だった。
崩れた壁から粉塵が立つ。

「びっくりしたってばよ!あぶねーなぁ!」

「シズクも突っ立ってないで避けなさいよー!あとちょっと右にズレてたらアンタ死んでたわよ!?」

「そ そうだねえ、は、ははは」

「笑い事じゃないっ!」

あとちょっと右にズレてたら?
違う。単なる偶然じゃない。
リング中央のキリュウに視線を戻すと、奴の手にはさっきまで握られていなかったクナイがある。奴はあれでコテツさんの棍を弾き飛ばしたんだ。
わたしの首すれすれを狙い、わざと軌道を調整して。そして、多分、わたしが避けないことにも 気づいてた。

コテツさんが試験官のハヤテさんに近付いてアイコンタクトを交わしている。どうやら判断はついたらしい。

《勝者、キリュウ!》

判定の最中、奴が一瞬だけこちらを見、笑みを浮かべたような気がした。中忍試験の開始前、集合場所の教室ですれ違ったときに見せたのような あの残忍な笑みを。
これは宣戦布告だ、次はほんとうに首を狙うぞ、という。


「思い出した。あれは四年前の中忍試験で問題になった、湯隠れのキリュウだったか……コテツも木ノ葉の才ある中忍だが、どーやらそれだけじゃ満足できなかったみたいね」

中忍相手に不満?
なら尚更、わたしが標的に選ばれる理由が謎だなあ。砂忍とか強い忍はたくさん集まってるのに。

「おいシズクってば、何カカシせんせーとコソコソ話してんだ?」

「べつになんでも」

「それよりあれあれっ!みろってばよ!!」

「?」

シシシと笑うナルト。指差す大きな画面には もう次の対戦者の名前が映し出されていた。

《薬師カブト VS 月浦シズク》

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