▼花のように

《春野サクラVS山中いの》

電光掲示が示す、私といのの名前。
ただの偶然かもしれないけど、神様がいるなら感謝しなきゃね。いのと真剣勝負できるチャンスが回ってきたんだから。
私にとっていのは、初めての友達で、憧れの存在で、目標だった。
お互いの好きな人を宣言し合ってからは、恋敵に。
私 サスケ君やナルトに追いつきたい一心でやってきたつもりだったけど、本当は、いのを越えたいっていう気持ちもある。
女は、愛と努力と根性。
女の忍として いの、アナタには負けられない。

正々堂々のタイマン。だけど死の森での五日間で体力は万全ではなくで、私もいのも一通り策を使い果たし あとは長い長い殴り合いになった。
実力はほぼ互角。
勝てる。そう油断して、私は隙をつくってしまった。
いのの最初の印はフェイクで 迂闊にも罠に嵌ったのだ。

《心転身の術!!》

心と体が切り離されたように、視界が一面真っ暗闇の世界に変わった。体が乗っ取られたんだわ。

《フフ…残念だったわね サクラ!》

いのの声が流れこんでくる。
いののヤツ、私の体でギブアップを宣言するつもりなんだわ……


「―――ダメだぁっ!!サクラちゃん!!」

諦めかけたそのとき、どこからかナルトの大声がハッキリ聞こえてきた。

「ここまでガンバって来たのに サスケバカ女なんかに負けたら女がすたるぞー!!」

うるさいわねー ホント生意気。
でも…そうね。
今回はアンタの言うとおりだわ ナルト。

「サクラ!!いの!!頑張って!!!」

この声はシズク。
なによ、ちゃっかりいののことまで応援して。

ねえシズク、私にすこしの勇気を頂戴。
私はこの名前の 咲きほこる桜のようになりたい。
みんなの背中を追ってばかりの私だけど、追いつきたい、みんなと並んで走りたい。
今は力不足でも、いずれはアンタとも戦いたい、そう思うから。
こんなところでいのに負けてたら、アンタたちに敵うわけないものね。
そうでしょ?ナルト、シズク。

「棄権なんかして…たまるもんですかーッ!」

ほとんど気合いだけで 私はいのの術を破った。

「精神が2つあるなんて……あ、あんた何者よ!?」

「ふ…知らなかった?女の子はタフじゃないと生き残れないのよ!!」

とはいえ、私も向こうも立ってるのがやっとな位疲弊してる。息も絶え絶えだし。
次の攻撃が 最後だ。

いのに渾身の一打を叩きこみながら、私たちが拳を交えるのを みんな見届けてくれてたかなと、少し考えたのだった。


*

「ん…うーん……」

目を覚ますとさっきまでのリングの上じゃなくて、しかも隣には、いのが柵に凭れて座っていた。

「やっと目が覚めたみたいねー…サクラ」

気を失ってた、ということは。
結果を想像して、たまらず涙がこみ上げてくる。

「私…負けたの…?」

「フン 泣きたいのはこっちの方よー。アンタみたいなのと引き分けなんてね!」

「え?引き分け?」

「そっ。アンタも咲かせたじゃない。キレーな花!」

笑っていのは私に額宛てを差し出した。

「いの…サクラァ…っ!」

「うわっ!!」

シズクが半べそ顔をゼロ距離まで近づけてくるものだから、反射的に仰け反る。抱きつかれながら、私は自分の体に、いのとの戦いの傷がなくなってることに気づいた。
意識がない間に、私たちのことを医療忍術で癒やしてくれてたってわけね。

「シズク!目ェ真っ赤!」

「もーっ、空気読みなさいよね」

「だって〜…サクラといのの戦い見てたら、こらえきれなくって」

「ホント、バカなんだから」

ついおかしくて 三人で笑った。私たち、アカデミーの頃より成長してるって思いたいけど、昔っから何も変わってないのよね。
いの、次は負けないわよ。
もちろんシズクにもね。
誓うわ。

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