▼アンインストール

何が起きたのかよく分かんねェ。マダラはなんで、オレたちじゃなくて魔像目掛けて攻撃してんだ。龍の形をした木遁が魔像の近くで“何か”してマダラんとこに戻ってきた。

「虫けら如きが余計な真似しおって」

「何だってばよ……?」

「魔像にまとわりつく小娘がしつこくてな」

「シズクに何したんだってばよ!?」

「代用品の分際で外道魔像を操ろうとするからだ。当然の報いを与えたまでのこと。だがこちらとしては好都合だったな。雨月由来のチャクラが足りなかったとこだ。少しもすれば完全復活した十尾と癒着し、吸収されるだろう」

ユチャク。吸収。
シズクは長門から譲り受けた輪廻眼で外道魔像を止めようとしてたってことか。そんなアブねーこと勝手にしてたのかよ、シズク。自分がどうなってもいーから止めなきゃって、そう考えてたに違いねェ。

「聞こえてたろ九喇嘛!すぐにシズクを助けにいく!」

「無茶苦茶言うんじゃねえ!今はマダラ相手が精一杯だ!」

「でもすぐ助けねえと危ねェんだ!!」

オレはカカシ先生に教わったんだ。ルールや掟を守らないヤツはクズ呼ばわりされるけど、仲間を大切にしないヤツはそれ以上にクズだって。

今すぐ助けてえ。なのにマダラが手強くて尾獣モードでも押されちまう。木の龍に巻かれた九喇嘛からチャクラが吸収されちまって、体の自由がきかねェし。
ビーのおっちゃんもカカシ先生も、このままじゃやられちまう。なんとかしねェと。

「この世界のクズを生む輪からは皆逃れることはできない。だからオレはこの世界を創り変える!」

オビトってやつが、カカシ先生に巨大手裏剣をかざしてそう言った。
さっきゲキマユ先生に聞いたんだ オビトってのは、カカシ先生の親友だって。今のカカシ先生の気持ちは、サスケが遠退いちまったときのオレみてえなのかもしんねえ。それだけ大事なヤツってことだ。

「……」

自分たちの理想だけ押し付けて、自分たちの考えばっか押し付けて、好き勝手に世界塗り替えようとすんじゃねェ。

「おめーらムカつきすぎて文句が思いつかねェ……だから代わりにオレのこと一つ教えとく」

影分身でマダラもオビトも防ぎながらオレは叫んだ。

「オレはクズじゃねェ!!この先クズにもならねェ!!オレの仲間は絶対、殺させやしねェ!!!」

そのユーズーきかねェ頭の耳かっぽじってよく聞け、それがカカシ先生から教わった第7班の教えだ!!
オレの大切な仲間、傷付けるヤツぁ許さねえってばよ。


*


ギギイィィィイィィイイイィィイイィイイイ

無数の牙を鳴らしながら、十尾は復活を証明するかのように大地に向かって咆哮した。尾は十。巨大なひとつ目は勾玉も波紋も宿している。人の形でもなく、この世のどの生物の形もしていない、化物。
マダラとオビトは共に 頭なのか背なのかも判然としない十尾の部位に飛び乗った。

十尾とのリンクの前に、マダラはひとり巻き貝の殻のような頂付近まで登ると、そこに伏しているシズクの後頭部を乱暴に鷲掴みにした。
その体は十尾と癒着しつつあり、剥がすことはできずとも、横顔を覗き見ることはできる。

「まるで生き写しだな」

髪、鼻、頬、唇、瞼。
どれひとつとっても似ている。

マダラの記憶に残っているのは今目の前にいるシズクの、祖母にあたる人物である。雨月シズクとは同じ戦乱の世に生まれ、一度は手を組んだが、マダラの里抜けを期に別離した。
正義を振りかざしながらも木ノ葉を去ったくの一を、マダラはまだ覚えていた。

「しぶとさまで瓜二つ。運命とは皮肉なものだな」

彼女の面影をのこした子孫が自分の手中にある。自らの力を強化する材料が。

「ようやく手に入った」

マダラは笑みを浮かべずにはいられなかった。


*

頼みの綱であった尾獣玉の総攻撃も虚しく、ナルトたちの前にはあたりの山々よりも巨大な化け物が姿を現した。

「ありゃな 普段、土や水 空気に感じるものと同じ、この世界を循環している自然エネルギーそのものだ。仙人モードに成る時と同じコツでやりゃあ話は別だが」

「そっか!アレが自然エネルギーだってんなら、どれほどのモンか確かめてやんよ!」

「やめとけナルト どの道そんなことしても計り知れねェってのが量れるだけだ」

ナルトが仙人モードで対峙したのは、限界のないエネルギーの収束だった。

「へっ……笑えねェ」

マダラはシズクの後頭部を解放し、十尾の瞼へと移動する。十尾から伸びた管はオビトとマダラの脊髄に伸び繋がった。

「十尾復活までの間に奴らを捕えるつもりだったんだがな。意外にやるな」

二人の思考回路は十尾に直結した。オビトは早急に無限月読の儀式に取り掛かるべきだとマダラに告げる。

「あの大幻術は月を呼ぶまでに時間がかかる。奴らは術の邪魔になる。先に魔像の力で処理した方がスムーズに事が運ぶ。違うか?」

「マダラ アンタは十尾の力を使ってみたいだけだろ。だからわざと…まるで子供だ」

「違うな。ガキってのは落ち着きのないせっかちのことだ」



「カカシ先生!あのトゲトゲの真ん中見てくれ!!」

ナルトが指さした十尾の頂には、まるで磔にされたかのようにシズクが体表に打ち付けられている。

「マダラのさっきの木龍に貫かれてるぞ!生きてるのか!?」

ナルトは仙人モードを使い、十尾の膨大なエネルギーの中をつぶさに見回した。十尾は違うチャクラを吸収している。そこはほんの少しだけ、灯りが灯るように明るい。

「すっげー弱ってっけど……生きてるってばよ!!」

ナルトの言葉にカカシたちは胸を撫で下ろしたが、状況は悪化している。十尾が復活してしまっては容易にシズクを奪還できない。

「早く助けねーと!!」

シズクが自力で十尾から離れることができないのならば、こちらから接触するしか方法はない。しかしその必要はなく、ナルトたちに向かって十尾が迫って来ていた。肥大した胴を引きずり、前脚で這いずる姿は不気味以外の何物でもない。

「オイ すんげーの来てるぜ。本当にやれんのかよ!」

「恐えーからってタコツボにずっと隠れてられると思うなよ!」

九喇嘛はガイ、カカシ、ナルトを回復させるため、攻撃から防ぐために体内へと匿った。

「いいか、まずは距離をとってアレの出方を見ろ!その出方に合わせて攻撃をかわしできるだけ近距離でデカイ一発を喰らわす!さっき言った通りだ!!」

九喇嘛に保護されたカカシは思わず微笑んでいた。破壊と憎しみの権化でしかないと自分たちが思っていた九尾に、自分たちはこうして守られ、共に戦っている。

「九尾……まるで隊長だな」

「あ”?文句あるか!?」

「イヤ…何だか…嬉しくてね」

これまでの奪い奪われるの関係ではない新しい道があることに、希望を見出ださずにはいられない。

「そういうのは勝ってからにしやがれ!!行くぞ!!」

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