▼私にできること
灼熱の炎の結界は尋常じゃない熱さで チャクラのガードが効かなくなって肌が爛れた。反動をつけて頭のてっぺんから火炎陣の結界に飛び込む。
グオオォオオォォオ!!
鼓膜を突き破るかってくらいの悲鳴。外道魔像の巨大な体に乗り上がると、もう十尾へと変化を遂げつつあるのか 所狭しと犇めく尾が侵入者を排除すべく暴れ出す。
大人しくしてて。
とっさに表皮にしがみつくと不思議なことに魔像の動きが弱まって、私に尾が飛んでくることもなくなった。そうか 輪廻眼の術者と触れてれば魔像はこちらの意思を汲むんだ。
不明瞭な視界で魔像の目を探し、体長の中央よりやや後方にそれを見つけ、刺激しないように、眼球へ近づいた。
「マダラの作戦の要となっているものだ。あの器がなければ尾獣を集めたところで意味を成さない」
信じるからね、父さん。
巨大な瞼を腕で抑え 魔像の瞳を輪廻眼の視野にしっかり捉えた。
「止まれ!!外道魔像!!」
咆哮が途切れ、十尾覚醒の動きもぴたりと静止する。
「成功した……?」
安堵に浸る暇はない。次で最後の操作になるだろう。
眼球から表皮をよじ登り、およそ体の中心あたりに移動して膝をつく。
父さんが以前、ナルトに使った術。印を結ぶと、掌には小さな黒い球体が生まれた。
これが核か。徐々に肥大してく核を、自分と魔像の表皮に押し当てる。チャクラが足りないのか術の発動はゆるやかで 負担が大きい。
「げほっ」
眼下を望む。地面から岩層が剥がれ、ひとつ、またひとつと引き寄せられてきてるのが見えた。
魔像を地爆天星で完全に塞ぎ、マダラとオビトの支配圏内にしてしまえれば終わりだ。あとはこの術の迷信に従い、月になるでも、なんでもいい。天空でもどこまでもお前を道連れにする。
一緒に誰も届かない場所まで行こう。
これが輪廻眼を手にした私ができる役目だ。
今まで何度も、私は誰かの背中に守られてきた。
由楽さん、三代目様、おじさま、おばさま、チカゲばあさま、イルカ先生、カカシ先生、綱手様、同期のみんな。お父さん、お母さん。その背中に守られ、時にその人たちは大切な人を守るため命を落とした。私も同じように生きるだけ。
「あと少し……」
―――ザシュ。
激痛が全身を襲い 自分の体を見下ろすと 太い木が体を貫いていた。
「ガフッ!!」
術の副作用とは違う吐血。樹木は私を貫通し、外道魔像の体表にまで刺さっていた。
「…木…遁……?」
致命的なダメージに意識が朦朧とする 輪廻眼にチャクラが回らなくなってく。初代火影様だけの木遁忍術 マダラが柱間様の細胞を取り入れたと情報があったのに 迂闊、だった。
輪廻眼の支配がはね除けられて 地爆天星も効き目を失い、岩片は再び地面に落下していく。
あと少しで十尾復活を止めることができたのに、土壇場で阻止されるなんて。
「……みん…な…」
額が魔像の体表を擦る感触を最後に私は意識を失った。
- 285 / 501 -
▼back | novel top | | ▲next