▼ 勝負はここから

奴が写輪眼を見せたとき 神無毘橋の戦いを口に出したとき 度々嫌な予感は増していた。それでも仮面が剥がれ落ちるまでは その可能性を考えないようにしていた。

オビト。
お前がこの戦争の 首謀者だっていうのか。


「オレを…責めないのか」

「こんなくだらない現実を今さら責めて何になる。これから消える世界のことなど興味はない」

「カカシ先生!こいつとの間に何があったかは知らねーけど、今落ち込んでる場合じゃねーだろ!!今はこいつのやろうとしてることを止めるのが先だってばよ!!」

「カカシ!ナルトの言う通りだ!今は世界がオレ達の手にかかってるんだ!」

オレを叱咤するナルトとガイの声。わかってる。立ち止まってはいけないと。外道魔像を止め、月の眼計画を阻止することが今は最優先だ。
そうでないとこの戦争は終わらない。
だが 何度言い聞かせても、この体がいつも通りに従わない。

「お前らに話すことなど何もない。現実に縛られたまま死ね」

巻き起こされた風にオビトの豪火が乗り、襲いかかってくる。応戦が遅れ、オレはナルトが伸ばした九尾の尾に守られていた。

五人がかりでオビトと対峙している最中に正真正銘のうちはマダラまでもが現れ、戦況はますます悪化した。
穢土転生のマダラへは、別の戦地で五影が総力を尽くして戦っていた。向こうを離れてマダラがここに現れたということは、つまり。

「向こうの皆はどうしたかって聞いてんだ!!」

「さあな。おそらく無事ではあるまいな」

ナルトの追及など意にも介さず、マダラは外道魔像へ関心を示しているようだった。

「八尾と九尾を入れ込む前に中途半端に計画を始めたのか。焦ったなオビト。オレをこんな姿で復活させたのもそのせいか?」

どういうことだ。
穢土転生で一時的に復活したにすぎないマダラが、暁側の計画を掌握しているような口振りでオビトと話している。マダラとオビトは一体いつから結託してたっていうんだ。

「まぁお前のことだ 何か考えがあるんだろうが……長門はどうした?時を見計らい、輪廻天生の術でオレが蘇る そういう手筈だったハズだが」

「長門は裏切った。その術で木ノ葉の里の者共を蘇らせて死んだ」

「全くどいつもこいつも……まあいい。今からでも遅くはない」

「死んだ奴がひっかきまわすな!」

ナルトが再び叫び、螺旋丸を放つ。だがマダラは赤子の手を捻るかのように容易くそれをはね除けた。
弟子のナルトが戦ってるというのに、先陣を切る筈のオレが足踏みしててどうする そう自分に言い聞かせても、頭の中で思考が渦を巻く。

リンを手にかけたオレが、お前まで絶望に堕としてしまったのかと。

態勢を立て直さなくては――そう踏み込んだ矢先。


「無理しないで」

小さな声で、しかしはっきりと囁かれたのを 聞いた。


声の主が誰かなんて尋ねるまでもない。吹き荒れる戦風に長い髪を靡かせながら、シズクはオレとオビトの間に割って入るように着地した。
まるでオレを庇うように立ち塞がり、前を向いたままに言った。

「こんなふうにカカシ先生の前に立つの、はじめてだね」

「…シズク」


*


「うちはオビト この前はよくも記憶操作なんて余計な真似してくれたね」

「うちは以外の者が自力で解ける代物じゃなかったはずだが、誰かが解いたか」

今さら気づいても戦争が始まった今となっては遅すぎるだろうにと、オビトは僅かに口角を上げて嘲笑してみせた。

「オレの正体が解決の糸口になるわけでもない。“月の眼計画”を阻止することは不可能だ」

「本当に不可能と言える?―――この眼を見たあとで」

靡く髪を片手で掻き分け シズクがオビトとマダラに何かを見せつけると、それを見たやつらの表情が一変した。

「輪廻眼… 貴様、その眼をどこで」

「これは父から譲り受けた形見だ」

輪廻眼?
父の形見だと?
己の目で確かめないことには判然としないが、その昔 神無毘橋下でオビトの写輪眼を移植した自分と、目の前にいる弟子との言葉が重なる。
昨夜、シズクは穢土転生された長門を探しに第3部隊を離れたが……まさか。

「父の眼ならあなたたちの計画を止められる」

覚悟に満ちた宣言だった。
オビトの顔に微かに嫌悪の色が浮かんだ。対して、マダラは食い入るようにシズクを眺め すぐに笑みをたたえた。

「見知った顔だな。さては雨月一族の者だな?先程から度々オレの視野を覗いていたのはお前だったか」

その笑みは、獲物を捉えた狩人のようだった。

「長門はとんだ失敗作だったが…かえって好都合だ。娘には父の尻拭いをしてもらわなくてはな」



八尾と九尾はオレが捕る。
マダラがナルトとビーさんから尾獣を奪おうとついに攻撃を仕掛け、それを阻止するために、ガイが後を追った。

オレとシズク、オビトの三人がその場に残り、対峙する。外道魔像の覚醒とやらが迫っているのか、赤い火柱で覆われた魔像は禍々しさを増していた。時間は限られてるようだ。
目の前の敵が再会を切望してやまなかった親友だとしても、もう立ち止まってはいられない。

「さて どうするかね……」

「カカシ先生 許してね」

「!?」

申し訳なさそうにオレを見るシズクの 片目に光る輪廻眼。
シズクはをオレの体を覆い隠すように、球状の結界を作り出した。
視界はクリアだが声が届かない。

お前、いったい何を―――

「ここだと近すぎる。この中にいれば安全だから」


こんなとこに閉じ込めてオレを戦いから遠ざける気なのか。
何が近すぎるっていうんだ。

オビトが大型手裏剣と火遁を併用してシズクに攻撃をしかけると、シズクは吹き付ける火炎や忍具を輪廻眼で弾き返しながら回避していく。攻防を逆転できないほどの状況じゃないはずだが、一向に自分から攻めることなく防戦に徹していた。

「怖じ気づいたか?」

反撃してこない相手へオビトが不審感を抱き始めたのと、それはほぼ同時だった。
あたりを震わせる咆哮が轟いだ。

グオオオオオオオオオオォ!!

「…!?」

苦痛に身悶えしているかのような雄叫び。叫び声の方角にオビトが顔を向け、すかさずオレも写輪眼で外道魔像を刮目する。
そこには、強固な火炎陣を突破して、外道魔像によじ登るシズクの姿があった。

「いつ影分身に…」

「最初からだよ。この眼なら魔像を操ることができるんでしょ?」

“父の眼であなたたちの計画を止める”

「二代目火影様が編み出した穢土転生は今の時代に大蛇丸やカブトに使われた。力も忍術も、きっと後の忍たちが転用してく。あの魔像にも……番人が必要なんだ」

お前の狙いははじめから外道魔像だったのか、シズク。

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