▼物語のけじめ

別天神によってイタチは穢土転生の呪縛から解かれたが、長門は尚も自由を制限され、操作が強化されていく。
長門の体は復元し、あらたに口寄せ動物を召喚していた。擬態能力を持つのか 輪眼眼を持つカメレオンは透化で姿を消した。

「ナルト!こっちから見えないだけであの人は近くにいる!気をつけて!」

「オウ!」

体色変化を緩めたカメレオンに跨がり、長門は忍たちのすぐ正面に現れる。

《神羅天征!》

「ビーさん後ろっ!」

「カンタンにいかねーぜバカヤロー♪コノヤロー♪」

背後に現れた長門に、ビーは瞬時に反応した。
尾獣化して致命傷になりうる打撃を放つも、餓鬼道の封術吸印で、その接触は返って長門に力を与えることになった。
吸収したチャクラを、自らに還元する能力。痩けた長門の肌に生気が宿っていく。彼の風貌が歳相応のものとなり、シズクはその姿から目が離せなくなった。借り物の身体でもなく、弱って痩せ細った姿でもなく、在りし日の長門に。
外道魔像との契約が無い今、長門は本来の能力に目覚めていた。

「ビーのオッチャン大丈夫か!?って、こっ この術はオレってば知らねーぞォォ!?」

ビーの増援に来たナルトは術で引き寄せられてしまう。
木ノ葉襲撃の際、ナルトは天道をはじめ何体かのペインと応戦したが、全ての能力を把握してはいなかった。

「何だこれ!!魂みたいの出ちゃってっけど!力抜けるしイヤな予感しかしねェ〜!!」

「ナルト!その術は魂を引き抜くの!早く長門から離れて!!」

「ハア!?んなムチャな!!」

長門本体と口寄せ動物に拘束され、ナルトは身動き一つできない。シズクはビーと同時に長門の頭上から狙いを定めたが、口寄せ動物と視覚共有している長門に不意討ちは通用しなかった。

「!?」

長門の体から生えたのは四本の腕。人間のそれではなく、からくりのように特殊な変形をするもの。シズクは雨隠れで受けたミサイルの攻撃を思い出した。

「まさに色んな手を使う♪術が飛び交う♪ナルト 九尾との綱引きを思い出せ!!」

「んな事言ったって!」

ビーとシズクの額に鎧の腕が宛がわれ、その切り口からは高密度化したチャクラが今にも放たれようとしていた。終わりだ、とシズクは反射的に目を閉じる。
―――絶体絶命の3人を救ったのはイタチの瞳術だった。

「なんだ!?」

3人は赤く波打つチャクラに包まれており、長門から間合いを取って守られていた。
地から半身を覗かせる巨大な戦士。不完全故に須佐能呼の表層は骸骨であったが、長門の鎧の腕を吹き飛ばし、ナルトの魂を引き摺りだしていた左手をも一瞬のうちに破壊した。
輪廻眼にも引けをとらない 正真正銘のうちは一族の実力である。

「何だこの忍者!?はっきり言ってむちゃ強ぇーじゃねーかよバカヤロー!コノヤロー!」

「ペイン六道つって、六道仙人の力を持ってんだからそりゃ強ぇーよ!!それに今回は本人だから力も動きもケタ違いだってばよ!!」

イタチの“須佐能呼”はナルトとビーを解放したが、シズクの身体だけは依然として 武者の掌から離さない。

「イタチ…もう大丈夫だから」

「お前はこのまま“須佐能呼”の手中にいろ。長門には尾獣の力やオレのような瞳術がなければ太刀打ちできない。不用意にその身を危険に晒さすな」

「でも!私はけじめをつけにここへ…」

「長門はオレたちで止めっから!!任せろってばよ!シズク!!」

ナルトがドンと自分の胸を叩く。
シズクは己の無力さに唇を噛み締めた。


「来るぞ」

左手の再生した長門が遂に要の印を結んだ。
長門の指から核が放たれ、地から木々や岩壁を剥がし、引き寄せ始める。

「何だありゃ ヨウ!?」

「あの黒い玉…相当の引力があるようだな」

ナルトたちの足元も崩れ、天へと吸い寄せられていく。

「この術、前にやられた!マジヤベーんだってばよ!!食らったら終わりだ!」

「ナルト」

「何だよ!?」

「食らって終わりならお前は何で生きてる」

「……」

「ハハハ!!なら大丈夫♪この勝負♪」

「笑ってる場合じゃねーよ!!すげー力で引き付けられんだぞ!!捕まったら二度と抜け出せねーし 何でこの状況で余裕ぶっかませんだァァ!?」

「余裕なわけではない。分析には冷静さが要る」

取り乱すナルトを嗜め、イタチは上空を見上げて思案に耽った。

「長門が投げた黒い塊が中心の核になっていると見るなら、あれを破壊すれば止まるだろう…三人各々の最強遠距離忍術で一斉に中央を攻撃する」

「こんな状況じゃうまく狙えねってばよ!」

「強過ぎる吸引力を利用すれば狙わずとも当たる…どんな術にも 弱点となる穴は必ずある!」


「OK!!」

地爆天星の特性を逆手に取り、イタチは核の球体を同時攻撃する作戦を立てた。ビーはイタチの策に迅速に対応し、尾獣玉を練り始める。

「よっしゃーオレも!!」

負けじとナルトも掌にチャクラを集めた。
球の中心へ命中する三人の忍術の、その威力たるや凄まじく、辺りの地形を吹き飛ばすような爆風が巻き起こる。“須佐能呼”に守られてなければナルトやシズクもただでは済まなかった程に。

「!!」

天を仰いだ長門の、その体を貫く、火の柱。
穢土転生の長門を封印すべく、イタチは“須佐能呼”の十挙剣で貫いた。

「手間をかけたな イタチ」

波紋の瞳に光が宿ったと同時に、体に亀裂が走り始める。

「すぐに封印する……何か言い残す事はあるか?」

問われ、長門は微笑み、ナルトを見つめた。

「…ナルト、オレは師匠の所へ戻って お前の物語を見ておくとするよ…」

お前は三部作目の完結編だと、長門はナルトに語る。第一部は師の自来也 完全無欠の物語。しかし二部作目は自分のように 大概駄作になると。
語る合間にも長門の体はゆっくりと綻んでゆく。

「シリーズの出来ってのは三作目 完結編で決まる。駄作を帳消しにするぐらいの最高傑作になってくれよ…ナルト!」

「オウ!!」

ナルトの心には、崩れゆく長門の背後に 二つの影が見えていた。
自来也と若かりし長門。一つ目の物語と二つ目の物語。ナルトはその続きの、締めを二人から託された。長門に向かってぐっと親指を立て、ナルトは兄弟子の思いに応えた。


「…」

ナルトと契りを交わす長門の姿を、シズクはじっと眺めるばかりであった。
時間は刻一刻と迫り、もう猶予はない。

まだ。
まだ何も伝えてない。

正しい別れの仕方をできなかった前みたいには、させない。

シズクは須佐能乎の腕から脱し、長門のもとへ駆け出した。

- 275 / 501 -
▼back | novel top | | ▲next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -