▼二つの瞳力

シズクは以前、イタチの助けによって鬼鮫の攻撃から逃がれたことがあった。
しかし彼は“暁”。イタチの死をシズクが聞かされたのは、ペイン襲撃直後。シズクにとっては、イタチが既に死者だという実感がない。
ここで奇妙にも再会を果たすとは思ってもみなかった。

「ナルト、お前に聞きたい事がある」

「そういやオレもアンタに聞きたい事があったんだ」

しかしイタチが問い掛けた直接、長門とイタチのチャクラの流れが一変した。

「!?」

ナルトとシズクは二人の僅かな異変を敏感に感じ取った。

「ナルト!ビーさん!避けてっ」

《火遁・豪火球の術!!》

流石うちは一族きっての天才。豪火球の威力たるや、他の火遁使いと一線を画する。
業火はナルトたちを襲うが、今やキラービーの使役と化した大刀・鮫肌によって削られ、火炎の中心に風穴が出来る。

「ギチチ!!」

「アレ 熱かった?怠慢すまん♪」

「ビーさん すごい……」

「ちくしょ、まだ喋ってんのに!」

「穢土転生の縛りを緩めるか強めるかは術者の自由自在なんだ」

「上だ!」

「わかってる!」

長門を支えていたイタチが、瞬身の術で消えた。
ナルトはイタチに正面から向かっていった。受け身をとりながら話をする他に 方法はないようだ。

「サスケはどうなった」

「あいつは“暁”のメンバーに入っちまった。木ノ葉へ復讐するつもりだってばよ!」

「…!!なぜサスケは里へ戻らない」

「アンタの本当の極秘任務を聞かされて そんで里を潰す事を選んだんだ!」

キラービーやシズクも補助に回り、三人ががりでイタチに応戦するも、イタチには一切の隙も見当たらない。

「まさか…マダラが…」

「そうだ!オレたちもアンタの事をマダラから聞いた!」

「……そういう事だったか…」

イタチは高く跳躍し、ナルト、ビー、シズクと距離をとった。

「ってことは、マダラの言ってた事はやっぱ本当だったんだな!?うちは一族が里を乗っ取ろうとして、それを、」

「もういい ナルト」

「…里とサスケを守るためにアンタは自分を悪党に見せかけて死んだ!アンタの苦しみも覚悟もサスケは理解してる!!でもサスケはアンタの意志を受け継ぐどころか木ノ葉を潰す気でいる!大好きだった兄キを苦しめた里への弔い合戦のためだ!」

イタチはしばし考え込むように沈黙し、やがて口を開いた。

「その事を里の皆は知ったか」

「イヤ…カカシ先生とヤマト隊長とシズクは一緒に聞いて…マダラの言った事は確証もねーからカカシ先生に口止めされてる」

「ならこの事は里の皆には決して言うな」

「どうして…!?」

イタチの言葉に反駁したのはナルトではなくシズクだった。

「私はアナタの真実を知ったとき、今まで何も知らずに守られて生きてきたことを悔いたよ!うちは一族と里との関係を本当にやり直すなら アナタのことを知らないと…!」

「いいんだ。名誉あるうちは一族に変わりはないのだからな……。それに」

《万象天引!!》

天道の力でナルトを引き寄せ、同じく引き寄せた大岩と衝突させる算段か。長門の術が再度イタチとの会話に邪魔が入る。

「うわっ!」

「ナルト!」

ナルトは腹部からチャクラの腕を出現させ、うまく攻撃をかわす。
シズクは驚きで瞬きを繰り返した。キラービーもナルトも、人柱力とはこのように尾獣の力を利用することにより、高度な戦闘が可能になるというのか。

「サスケはお前にまかせる」

「ハナからそのつもりだ!」

「やはりお前に託して正解だった」

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