▼奇妙な五人組
木ノ葉崩し後に書かれた報告書によれば、穢土転生の発動には、血や骨や髪など、対象者の体の一部を必要とする。
報告を読んでいたシズクにはある疑問が沸き上がっていた。
長門の遺体、もしくはその一部を、なぜカブトが持ち得たのか?
小南は弥彦と長門の遺体を雨隠れの里へ連れ帰った。最後の会話から想像するに、彼女が“暁”に寝返ったとは到底考えられない。
しかし長門の体は敵にある。
そうなると、考えられる道はひとつ。
空は白み夜は明けた。
東の野からは 眩しい朝日が差し込んでいる。
墨で出来た鳥の毛並みにぐっと指を這わせ、シズクは唇を噛み締めた。
「こんな日でも……朝日が昇るんだ」
「…私、彼やあなたたちの育った場所を見てみたい。もし叶うなら、力になりたい」
「待っている」
「……小南…約束守れなくてごめん…」
涙は見せず、シズクは鋭い眼光を眼下の森へと向けた。
*
日の出から数時間。
イタチと山道を歩む長門は、突然ふっと微笑むと、「まさかな」と口を開いた。
「近いのか」
「ああ。もう懐かしく感じるな」
二人の前に現れたのは ナルトとキラービーだった。
忍連合の忍に扮して戦地に混乱を招くゼツを退治するには、チャクラの“悪意”を感知することができるナルトが必要になる。雲隠れの孤島を脱した二人は、戦場の仲間たちに合流するため、先へと急いでいたのだ。
「うちはイタチに……長門!!」
「知り合いか?ナルト」
「ああ二人ともな!」
「まさかお前と戦わされる事になるとはな…ナルト」
正面から相見えた四人。
さらに、四人の頭上には、忍術で出来た鳥が高度を下げて向かってきていた。
鳥の背に乗っていたシズクは、高度が下がったところで羽を離れ、地面に着地する。
そしてイタチと長門に向き合うように立ち上がると、驚きの声をあげた。
「な、ナルト!?」
「シズク!!」
ナルトとビーの遁走を知らないシズクは、二人が居る訳もわからずに眉を寄せた。
「なんでここに?島亀にいるんじゃなかったの!?」
「オレの仙術でゼツって奴を倒すって シカクのおっちゃんに言われてんだ!」
「次から次へと登場♪今度はかわいい童女♪」
「どうじょ!?わ、私は16です!っていうか見るからに怪しい……さてはあなたも穢土転生ね!」
「いや、シズク そっちは八尾のビーのおっちゃんだってばよ」
里も違えば年代も違う、かろうじてお互いにその名だけ知っているような奇妙な五人の忍が、一同に集結した。
*
「シズクか……」
「!」
名を呼ばれ、シズクは声の主へと振り向いた。
その先には、再会を喜ぶように穏やかに微笑む長門がいる。
「久しぶりに会った事に……なるんだろうが」
「……」
「あまり歳月は経っていないようだが、見ないうちに大きくなったように感じるな」
長門の死後、自分たちの関係を後悔し、彼にもう一度会いたいと思っていたのは確かだった。
それでもいざ対面すると、一体どんな顔をして、どんな言葉を交わせばいいというのか。
ここへ来れば再会できると知り、最高速度で駆けつけたにも関わらず、シズクは黙していた。
「それに……少し変わったな、ナルト」
「ああ コレか!これってば九尾のチャクラをコントロールした チャクラモードってやつだってばよ!」
「だから変わって見えたのか」
忍術だけじゃなくて、顔立ちが。
シズクとは対称的に、成長した姿を見せるように、ナルトは自信に満ち足りた顔を長門に向けた。
「ナルト いつの間にその術を?」
「ビーのおっちゃんに会ってさ!ちょっち色々あったんだってばよ」
「九尾の力をコントロール……ここまで成長するとはな」
「オレの弟弟子だからな。思った通りだ」
「それオレのおかげ♪それまでけっこうこいつは日陰♪」
「んな事なかったってばよ!!」
ビーに食って掛かるナルトをみて、長門は安心したかのように語りかける。
「なら、憎しみを克服できたって事だな?ナルト」
「オウ!兄弟子のアンタが教えてくれた痛み……ビーのおっちゃんと真実の滝での修行に、父ちゃん母ちゃんに…。とにかく皆のおかげでここまでこれた!」
戦争から隔離されていたナルトは、両親との邂逅を経て、術や力だけではなく心に 大きな何変化が生まれていたのだった。
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