▼盾と成りて

「この忍たち全部 死人なのか……?」

若い忍たちの恐れをなした呟き。
開戦直前、各部隊へは敵が穢土転生を扱う可能性があると示唆されていた。しかし、これほどの軍勢を率いてくるとは誰しもが想定しえなかった。

「忍刀七人衆か」

流石のカカシも目を細め、背後の仲間へと振り返る。穢土転生に利用されている忍は感情も制御され、その肉体は際限なく再生する。物理攻撃は無効。

「エンスイ小隊、準備は?」

「あと少しです」

「砂隠れのマキ そっちはどうだ」

「ああ。こっちはいけるよ!」

死者の戦士に対抗する唯一の方法は、相手を拘束 又は封印してしまうことだった。作戦の要となるのは、影真似を駆使する木ノ葉隠れ奈良一族。そして砂隠れの秘術使い・マキ。

「歴代の忍刀七人衆の中でも どの方も強い忍ばかりだ!選んでやがる!」

「皆一斉攻撃だ!時間を稼げ!!」

指示のもと 武器を握る者、印を組む者。第3部隊の忍たちはそれぞれの戦術で不死身の敵に立ち向かっていく。四方八方からの攻撃により 土埃が辺り一面に舞い上がるも、忍刀七人衆たちの体はみるみるうちに修復された。
地面に散らばるクナイや手裏剣は増えていくばかり。

「ダメだ。やはりいくら攻撃しても……」

「どうすんだよ、あんな奴ら相手に……しかも忍刀七人衆だぞ!長引けばこちらがどんどん不利になる!」

「心配するな!あの術は”魂を封印する”か”身体を動けなくする”のどちらかで止められる。それに再不斬以外、刀を持ってない。そうなりゃあ奴らの力も半分だ!」

「いや そうじゃないみたいよ」

忍刀七人衆の一人・鬼灯満月が巻物を広げると、そこに印されていたのは 断・大・長・鈍・爆・雷・双の7文字。身一つの刀使いが口寄せを使うとするならば、推測は容易だ。
案の定 巻物からは特殊な形状の、四口の刀が現れた。

「全員分は無しか」

「カカシ、さらに霧が濃くなってくぞ。これでは見えん…無音殺人術で音もない。耳でもダメだぞ!」

「この霧をどうにかしないと連隊は不利だ」

霧隠れの術を扱う再不斬を優先的に封じるため、カカシは影真似の術での封印作戦を考案。居どころの定かではない術者を、心転身の術を用いて距離を縮めていく算段である。

「カカシ隊長!影真似縛り整いました!」

そこへ、奈良一族のエンスイがようやく合図をする。

「よし 行きますか」

雷切の体制を整えたカカシに、シズクが言った。

「サポートにつきます」

「イヤ いい。先陣はオレ一人でいく。シズク お前は救護に回れ。七人衆のお陰で負傷者がだいぶ増えてる」

「ダメです!危険すぎる」

「隊長命令だ」

「……」

ここで口論していては元もない。滅多にないカカシの叱咤に、シズクはしぶしぶ引き下がった。

「やるぞ!!」

「ハイ!」

再不斬のいる地点へと駆け出したカカシ。
その動きを感知し、忍刀七人衆をはじめとする穢土転生の忍たちが彼の行く手を阻もうとする。

「オレ達でカカシさんをガードするぞ!!」

大連隊側もまたこれに応戦し、戦線は複雑に分散されていった。

*

七人衆の扱う大刀は、どれも刀と呼び難い。
雷刀や鈍刀、突き刺した忍をひとまとめに縫い合わせる長刀。太刀筋から爆発するもの。こぞって奇妙ななりをしているが、その殺傷能力は目を見張るものがある。
刀を持ち得なくとも各々の戦闘能力は大連隊の忍一人のそれを上回る。
防戦の甲斐あってカカシはターゲットの再不斬に気付かれずに背後を取ったが、雷切が貫通したのは再不斬ではなく白の体だった。
操られているというのに、偶然か否か。
かつての戦いと同様に白は己の身を呈して再不斬を守ったのだ。

「何……!?」

胸を貫かれながらも間に割って入った白が、カカシの腕を掴み、断固として離そうとしない。
いつだったか、彼が自分の命を引き換えに大切な存在を守っていたときのように。少年の背後には、再不斬の首切り包丁が迫っていた。

「カカシ隊長!!」

カカシは左手で白の体をしっかりと支え後方に後方に跳んで避けようとするも、間に合わず。
体を完全に分断された白からは紙の破片のようなものが飛び散った。
紛れるかのように飛散する鮮血。無論 その血はカカシのもの。

「くっ……」

「カカシ隊長!」

「!?」

マキの叫び声を聞き、救護をしていたシズクは声のする方へと急いだ。

「カカシ先生っ!!」

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