▼立ち向かえ

「カカシ隊長、あの岩隠れの男は血継限界・爆遁の使い手、デイダラと同じ元爆破部隊のガリ そしてあの女は砂隠れの血継限界・灼遁の使い手 パクラです!気をつけて下さい!」

「ああ……来るぞ」

《忍法・霧隠れの術!!》

再不斬が印を結ぶと、周囲は突として霧に包まれる。穢土転生の忍たちの影が揺らぎ、やがて霧に紛れて完全に見えなくなった。

「感知タイプを中心に戦闘隊を組め!他は卍の陣を基本としろ!再不斬は音だけでターゲットの位置を掴む!」

四人一組で陣形を組むも、深い霧で一寸先は闇。息を殺せど各々の鼓動が大きく響いた。

「怖がらなくても大丈夫です!サクラさんはボクが死んでも守りぬきますから!」

「前回はこの陣の唯一の死角である中央から攻撃してきたの背中にも気をつけて リーさん」

「え……?あ ハイ!」

かつて刃を交えた経験を持つカカシ、サクラ、シズクであっても、再不斬がどこに出現するかは見当がつかない。やがて空気も冷たくなり、忍たちが僅かに吐く息も白く変わった。

「霧の次は冷気?」

「かわして!白の氷遁だ!」

「ぐああっ!!」

シズクが反射的に叫んだものの、再不斬と白の斬撃の方が速く 仲間が地に伏していく。

「始まった……!」

*

第3部隊のいる戦地は凄惨を極め、途切れることなく悲鳴が聞こえてくる。

《灼遁・過蒸殺》

「体の中がァアア!!」

かつて砂隠れ一の手練れくのいちと称された灼遁のパクラ。彼女を囲む火の玉は、わずかでも触れた者の体から、血液 体液やあらゆる水分を奪う。

「ミイラ化してる……」

灼遁を回避しきれず、忍たちは瞬く間に身体中の水分を奪われ 次々に倒れていった。

《爆遁・地雷拳》

「ぎゃあああ!!」

同じく危険なのは爆遁のガリ。爆遁はその名の通り、掌で触った対象物を爆破させることができる 身の毛もよだつ忍術である。触れた忍が今 跡形もなく吹き飛んだ。煙の消えたあとには、残骸と呼べる塊は残っていなかった。
誰かの血、誰かの身体のかけら。たった今までそこで共に戦っていたはずなのに、一瞬にして奪い去られる。
これが戦争か。
焼け焦げる匂いは死臭となり、視界も悪く、五感はひとつずつ麻痺してゆく。
まるで地獄絵図であった。

「そんな!タジキがっ このやろー!!」

若手の忍は憎しみの形相をガリに向け、まっしぐらに駆け出していた。それを待ち受けていたかのように、魔鏡に潜んでいた白が姿を現した。

「止まれ!」

気付いたシズクは、若い忍の後を追った。
大の男を横から捕まえると、そのまま抱えて後退する。そこへガイとリーが割って入り、白に一撃を加えた。

「木ノ葉つむじ旋風!!」

「ガイさん……」

「戦場では仲間が死ぬ!それは覚悟して来い。取り乱すとよけい仲間が死ぬ事になる!仲間の死を次に活かせ!分かったな新人!!」

「ひっ」

指摘された若者は、ガイの一喝に頷くも その場にがくりと膝をついてしまった。頭ではわかっていようとも恐怖で足がすくんでいる。

「!?なんでっ!足が……っ」

彼だけではなかった。付近で重軽傷を追った何人もの忍が、同様に立ち竦み、呻くように声をあげていた。

「助けてくれぇ」

「うぅ…怖ぇ…っ!」

「あんな奴らじゃ もう……」

忍たちが次々に弱音を吐く最中、シズクはチャクラ刀を片手に声を張り上げた。

「立って!!活路を開く!」

「!?」

シズクが顎でしゃくった先では、死者たちが四方を駆けずり回っていた。

「灼遁のパクラや爆遁のガリは戦線を混乱させ、隙をついて白が氷遁で止めをさしてくる。腕と足を狙え!復元中は封印の準備が整うまでの時間稼ぎにはなる。私の炎も効いてる!」

シズクは穢土転生の忍相手にチャクラ刀を振りかざすと、ためらいなくその足と腕を引き裂いた。
刃先は発火し、白い火花が死者たちの仮初めの肉体を焼く。陽遁と火遁が組合わさった彼女の特異なチャクラは、穢土転生の肉体再生を拒絶していた。

「しかし、」

「散り散りにならないで!近距離型は援護をお願いします!大切なのはチームワーク!」

「チーム…ワーク……」

「我愛羅との約束を守るよ!さあ立って!!」


「オレを救ってくれた友を 今敵が狙っている。彼が敵に渡れば世界は終わる。オレは友を守りたい!そしてこの世界を守りたい。だが世界を守るにはオレは若すぎる 浅すぎる!だから皆の力を貸してくれ!!」


髪を振り乱しながら前へと進むシズクの、その後方を若い忍たちが援護していく。

「敵の陣形と手の内が分かってきた。今度はこっちからだ!」

*

しかし非情にも、忍連合側が敵方の術や連携を把握しようという段階に差し掛かったところで、カブトは容赦なく次の作戦へ駒を進めた。
ガリとパクラが発動したのは、それぞれの血継限界ではなく、口寄せの術。

「あれは……霧隠れ忍刀七人衆の前任者達だ!!」

口寄せで地中から出現したのは、幾つもの棺。
不気味なチャクラを漂わせるそれから軒並姿を現したのは、霧隠れ最強の戦士たちだった。

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