▼自分たちの番
木ノ葉隠れの里の一角。
人気のない材木置き場に同期の忍たちで集まった…というよりも、帰還後キバ達に事の次第を説明するよう促され、着の身着のまま連行されたのだ。
ナルトの決断は、もちろん、みんなにとって簡単に頷けるものではなくて。
「サスケを一人でやるぅ!?そんなんで私達が納得できる訳ないでしょ!」
「テンテンの言う通りだ。ナルト、お前一人のわがままには付き合っていられない。なぜならこれは里の大きな問題だ」
「帰ってきてから詳しく話すっつーから何を言うかと思えば!オレ達だって、サスケを殺すってかなりの覚悟して行ったんだぞ!!」
キバが語尾を荒くする理由ももっともだ。
里抜けして暴挙に走る仲間を自分たちの手で終わらせるとみんな一大決心をしたのに、託されたメンバーが当のサスケを殺さず捕まえもせずに帰ってきたんだから。
「おい ナルトお前、まさか一人でやるって言っときながらサスケを庇うってんじゃねェだろーな」
「……サスケを庇うつもりはねーよ」
シカマルの詰問は鋭い。この場でみんなに話してはないけど、サクラが鉄の国でサスケを殺すことができなかったこと、多分シカマルは見抜いてる。だからサクラと同じようにナルトも、と思っているのかもしれない。
「五影とダンゾウを相手した後のサスケだろ。何で一気に片をつけなかった?」
「マダラもいたし!そんなに簡単な感じじゃなかったのよ!それに……」
「だからってみすみす逃がす事はねーだろ!」
キバ、途中で眠らされたこと かなり根に持ってるな。サクラの弁明にますます憤慨して、今度はナルトと私を交互に見て、吠えるように言った。
「ナルト お前は強えーんだせ。里を守った英雄ってやつだろーが!カカシ先生やシズクだっていたんだろ!共闘すればサスケは、」
「違う」
と、思わず呟いてた。
「サスケを始末すれば問題が解決する問題じゃなかったんだ」
「なんだよソレ?」
「…」
うちは一族の因縁、サスケの兄であるイタチの真実と。サスケの意思。みんなにはまだ、鉄の国で知った真実を告げてはいなかった。
まだ他言無用の案件。
でも、いつまで内密にすべきことなの?共有したら、何かが変わるんじゃないの?
思案しながら、私はシカマルを盗み見た。シカマルならあの話を聞いたらなんて思うだろう。どんな行動を取るだろう。冷静な判断力がほしい 正直なところ、藁にもすがりたい思いだよ。
「やみくもじゃ今のサスケは倒せねェんだ。それが分かった」
「だからどういう事?」
「とにかく、今のサスケとは誰も闘っちゃダメだ。闘えるのはオレしかいねー。そういう意味だ」
「一体何があったんだ?詳しく説明しろって」
「言うべき時がきたら言うってばよ。……あのさ、オレってば腹減ってっから!ちょい一楽行ってくるってばよ!」
「あ、おい!ナルト!」
ネジが詰め寄るも、ナルトはあからさまに言葉を濁して、珍しく瞬身の術まで使ってトンズラしてしまった。
同期のみんなは一様に不服そうな顔で残された私とサクラに視線を移す。ナルト、置き去りなんてひどい。私も一楽行きたかった。
資材に寄りかかる体をしかたなく起こして、私はみんなの前に立った。
「サスケのことはナルトに任せよう。私からも頼む」
ナルトとサスケの決めたことには、あの場に居合わせた私やサクラでさえ、立ち入れないものがある。
二人は一対一の闘いを望んでいる。そして、自分たちよりもっと前から続く縁故を考えれば、戦えば二人共命を落とすと、そう察知した。
このことを話してしまったら、みんなが黙ってるわけがない。
「それにこれからのこともあるし。里にいたみんなも 第一報で聞いてるよね。これから戦争がはじまるって。私たちも戦争に出向くことになる。始まったらサスケを追ってる余裕はない」
第四次忍界大戦――――それが、私たちが血を流す戦の名前らしい。“暁”である仮面の男の狙いは、五大国が所有する、残り二人の人柱力。
停戦協定後に生まれた私たちは戦中を知らない。そもそも、忍里同士が手を結びあう大きな戦争なんて誰も経験したことがないんだ。
「それと……ネジたちも、きっと私のことを聞いてると思うけど…木ノ葉襲撃の首謀者は…たしかに私の、」
「シズク 解ってる」
「!」
「案じなくていい。サスケのことを決めたとき、お前のこともみんなで誓い合った。なにがあろうとお前はオレたちの仲間に変わりはない」
「ネジ…」
「それにナルトの件だが、オレたちもナルトの心中は汲み取っている。なぜなら、この場にいる誰もナルトの背中を引き留めてはいない。それが確かな証拠だ」
「シノ、お前また硬え言い回ししてんなよ!要はオレたちだって、覚悟はしてるが誰もサスケを殺してーなんて思ってえってことだよ!な!」
「それは言わずともシズクもサクラも理解してるだろう キバ。なぜなら…」
「そこらにしとけよ。直に戦争だ。もうめんどくせーなんて言ってらんねーからな。今度はオレたちが里を守る番だからよ。気ィ引き締めていかねーとな」
「……うん」
戦争を知らない平和な時代に、私たちは守られて生きてきた。でももう守られる存在でもルーキーと呼ばれる存在でもないことを、全員が自覚してるのだった。
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