▼引き合う果てには

いそいで橋の上を渡る。眼下の水面には、サスケ サクラ カカシ先生 そしてナルトの姿がある。
3年の月日を経て、第7班が全員揃った光景を見れた。
願っていた再会とはいちばん遠い形だったけれど。

「あ…ありがと…ナルト」

抱き抱えたサクラを下ろすと、ナルトはサスケへと振り返る。

「サスケェ…サクラちゃんは同じ第七班のメンバーだぞ」

「元第七班だ。オレはな」

「イタチの真実ってのをトビって奴から聞いた。ウソか本当かはオレにはよく分からねェ。けどどっちにしても、お前のやってる事は……分かるってばよ」

「ナルト 前に言ったハズだ。親や兄弟もいねぇてめーにオレの何が分かるってな 他人は黙ってろ!」

「サスケくん!ナルトがどんな想いでサスケくんを…!どんな悪い事を耳にしてもずっと仲間だと思ってた!それに今だって、」

「さっきだ」

サクラの反駁を気にもかけずサスケが続ける。

「さっきやっと一人だけイタチの仇を討てた。木ノ葉の上役をこの場で殺した。ダンゾウって奴だ」

決定的な言葉だった。
五影会談でサスケがダンゾウを狙い その後双方とも姿を眩ましたと聞かされてから。この場にかけつけて、激闘の跡や謎の血痕を目にしたときから。
どうか思い違いであってほしいと思っていたことだった。
サスケが――ダンゾウを殺した。

「なんでダンゾウを手にかけたの……?」

「ダンゾウはイタチだけじゃなく 数限りなく忍の人生を狂わせてきたらしいな。シズク、お前も恨んでるクチだとマダラに聞いた。お前だってダンゾウに復讐しにきたんだろ?」

ちがう。ちがう、私は。

「奴はイタチの真意を釈明できた!サスケ、これじゃイタチのことは明るみに出せなくなる!」

「オレは今さら木ノ葉に謝罪を乞う気はねェ」

腕を広げ、まるで清々したような顔でサスケは語る。

「今までにない感覚だ。汚されたうちはが浄化されていく感覚…腐れきった忍世界からうちはを決別させる感覚。お前たち木ノ葉がずっと望んできた事だ。昔からうちはを否定し続けたお前たちの望み通り、お前たちの記憶からうちはを消してやる。お前達を木ノ葉の全てを殺す事でな!つながりを全て断ち切る事こそが浄化!それこそが本当のうちは再興だ」

「サスケくん…」

「これはオレの役目だ。ナルト サクラ シズク…お前達はここから離れろ」

「カカシ先生!でも!」

「ここに居れば見たくないものを見る事になる。今のうちに行け!」

「カカシ先生 それってば…サスケを殺すって事か?」

無言による応答。それは肯定を意味している。
行け!と促す先生を影分身で拘束して、ナルトは強引に道を開いていった。

「待て!ナルト!」

「隙を生んだな!容赦はしない」

「ナルト!!」



――――爆風を逃れるために覆った瞳を開くと、私は辺りいちめん 何もない場所にいた。
術の拮抗ですべて吹き飛んだのかと身震いしたけれど、ナルトとサスケが、さっきみたいに眼下で向かい合って佇んでいた。

なんだろう、ここは。
不思議と明るく、体は重さや気だるさを感じない。

「お前も知ってんだろ…オレが昔、里の皆に嫌われてた事」

その理由ってのが、オレん中の九尾だ
ナルトはサスケに語りかける。

「オレも昔は里の皆を恨んでた。復讐してやろうと思った事もあるし 一歩違えばお前みたいに恐ろしい事まで考えたかもしれねェ…。オレには誰ともつながりなんてないと思ってた。お前やイルカ先生に会うまでは」

サスケへの感情を、照れ臭くて今まで言わなかった大切な言葉を、ナルトは驚くほど素直に、サスケに伝えていた。

オレはお前と会えてホントによかった、って。

穏やかに笑うナルトに対し、サスケの目には未だ憎しみが宿っていた。

「お前が今さらオレに何を言おとオレは変わらねェ!!オレはお前も里の奴らも一人残らず全員殺す!!行きつくところお前の選択は、オレを殺して里を守った英雄になるか!オレに殺されてただの負け犬になるかだ!!」

そのどっちでもないと答えて、そこでまた視界が明るくなった。



気が付いたら 私はふたたび橋の上に立っていた。
さっきいたあの場所は、一体どこだったんだろう。
ナルトとサスケ、螺旋丸と千鳥。触れた瞬間に深い意識で繋がったみたいだった。
対峙するふたりのあいだに 仮面の男と白い土塊の体をした謎の生き物が現れ、増援かと反射的に身構える。
だけどナルトは平然とした様子で歩み出し、サスケに再び語りかけた。

「お前もオレの本当の心の内が読めたかよ…このオレのよ」

お前とオレが戦えば、二人共死ぬと。


最初からこうなることが決まっていたかのような、交錯だった。
なぜだかわからないけれど、ふたりがこれまで―――いまの二人になるよりずっとずっと前から、なんだか幾度となく出会い、すれちがって、戦ってきたように、感じた。
そして、何度も繰り返したから判るんだ
それぞれに自分の命を懸けなければ、相手を止めることができないということも。

「お前が木ノ葉に攻めてくりゃ オレはお前と戦わなきゃならねェ。憎しみは全部オレにぶつけろ。…お前の憎しみを受けてやれんのはオレしかいねェ!その役目はオレにしかできねェ!オレもお前の憎しみを背負って一緒に死んでやる!」

「何なんだ…?てめえは一体何がしてえんだ!?何でオレにそこまでこだわる!?」

「友達だからだ!!」

聞こえてる。届いてる。もう迷いを吹っ切ったナルトは、清々しく凛と笑って見せた。

「サスケェ…お前と分かり合うにゃ、一筋縄じゃいかねえって初めて会った時から分かってた。拳で分かり合うのがお前とのやり方なのは間違いねーよな!」

戦いの果てにお互いが死んだとしても、その時はうちは一族でも九尾の人柱力でもなくなって、本当の意味で分かり合える。
憑き物が落ちたようなナルトを、カカシ先生は諌めた。

「ナルト、お前には火影になるって大切な夢がある。サスケの道連れでお前が潰れる事は…」

「仲間一人救えねェ奴が火影になんてなれるかよ。サスケとはオレが闘る」

「…!」

「…いいだろう。お前を一番に殺してやる」

誰の言葉にも耳を貸そうとしなかったサスケが、ついにナルトと約束を結んだ。

*

お前を一番に殺してやる。
サスケはナルトにそう言い残し、例の仮面の男たちと共に去っていった。
ナルトとサスケの戦いは次へと持ち越されることになって、仲間内でサスケを殺すという最悪の結末だけは回避することができたのだった。

「オレもお前の憎しみを背負って一緒に死んでやる」

全てはナルトの覚悟によって。


クナイの猛毒が回っててあれだけ動いてたなんて、ナルトもタフだなあ。
サクラがナルトの毒抜きをしている最中に、カカシ先生は橋の上まで行き、体を起こせるまでに回復した赤毛のくの一に近づいていった。

「君は木の葉へ連れていくよ。おとなしくしててね」

「今さら何もしやしねーよ」

「先生、私がその子をおぶってくよ」

「けど…」

「先生だって写輪眼でバテぎみでしょ。ホラ」

「…じゃ、お願いするよ」


「あなたの名前は?」

「もう尋問かよ」

「ちがうよ。ただ知りたいだけ」

ぶっきらぼうに「香燐」と答えてくれた。
なんか親近感が湧くというか、ついさっき初めて出会ったみたいに感じないな。

「サスケはダンゾウにとどめまでは刺してねーよ」

「!」

「ダンゾウは死の間際に道連れの封印術を使った」

「……その話、信じてもいい?」

「お前泣いてんのかよ、げ!鼻水!ウチを下ろせ!」

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