▼キライだ

「サクラちゃん 今何て言ったの!?き、聞き違えたかもしんねーから……もう一度…」

「だから、ナルト アンタの事が好きだって言ったのよ!」

「え え?」

「もう、人が告白してんだからちゃんと聞いてよね!」

「でも……どうしてだってばよ?こんなとこで冗談言っても面白くもなんともねーってばよサクラちゃん」

え?

サクラがナルトに告白してる?
え?え、ええ?何がどうなってるの。
カカシ先生のベストのホルダーに押し込まれて何も見えないし、聞こえてくる声だけじゃ状況が全然わからない。

「だから!しつこく付きまとわれてるうちにアンタを好きになったのよ!ねえ、ナルトもサスケくんを追いかけるのはもう止めにしない?」

「……」

「あんな人を好きでいた私がどうかした。もういいの。サスケくんなんて私にとってもうなんでもないってこと!だからナルト、アンタとの約束も、もういいの」

約束―――そうか。これはサクラの 精一杯の嘘なんだ。
サスケが里を抜けようとも犯罪に加担しようとも、いまさらサクラが心変わりするわけない。
なんとしてでもサスケを里に連れ戻そうとするナルトを、自分の気持ちを偽ってまで止めようとしてるんだ。

「サスケくんはどんどん私から離れていくだけ。でもナルト、アンタはいつも私の側で居てくれた。私を励ましてくれた。ナルト……アンタの事はこうして触れていられる。安らぎをくれる。今はアンタの事が 心の底から、」

「いいかげんにしろサクラちゃん」

「!」

「そんな冗談は笑えねーよ」

「何キレてるの?私がただサスケくんからアンタに乗り換えただけの事じゃない。女心は秋の空って言うでしょ?」

「オレは……自分に嘘をつくような奴はキライだ!」

「わ、私が自分に嘘ついてるって?自分の本心は自分が決める!!私が嫌いなら正直に言えばいい!!勝手な言い訳を作るぐらいなら、」

「だっておかしいだろ!そんな事を言うためにわざわざこんなところまで!」

「そんな事!?そんな事って!女の子が告白する事がそんな軽い事だと思ってんの!?わざわざこんなとこまでって!?こんなとこまで来るわよ!アンタはサスケくんサスケくんって、いつもサスケくんを追いかけて危ない目にあうばっかり!人柱力で”暁”に狙われてんだから、少しは自分の心配したらどうなの!」

サクラの言葉に、だんだんと本音が混じってきてる。

「私はね、そんな危ない目にあってまでサスケくんなんか追っかけなくていいって言ってんの!今すぐ里へ帰って来てほしいからアンタを追ってここへ来た!それだけよ!」

「苦しい言い訳にしか聞こえねェってばよ。サクラちゃんの事は……オレも分かってるつもりだ」

「だから何で分かんないの!私はもう犯罪者になったサスケくなんて何とも思ってない!私との約束だって、もう関係ない!」

「約束の問題じゃねーんだ」

ナルトの声色が、静かなものに変わったのを感じる。きっと、さっきのマダラの話を反芻してるんだ。

「サスケの奴が何で復讐に取りつかれて暴れてんのか…オレにも少し分かる気がするんだ。サスケは、家族や自分の一族が大好きだった 愛情深けェ奴だから、余計許せねーんだと思う」

「だったら何で、その許せねェイタチを倒した後”暁”に加担すんだ?」

キバも来てるのか。
詰問に、ナルトは言い淀んだ。

「そうじゃなかった。本当は―――」

「ナルト」

「いいか、マダラの言った事はとりあえずオレ達だけに止めておく。極秘事項だ」

続く言葉は、カカシ先生が制したらしかった。
内心 ナルトも私も、カカシ先生やヤマト隊長でさえ、マダラの話を受け入れてかけてる。
それでも、今のサクラにはなおさらそれを伝えることはできない。嘘で告白するサクラに、これ以上思い詰めて欲しくない。

「……とにかく、サクラちゃんとの約束がなくなっても関係ねーよ。オレはオレ自身でサスケを助けたいと思ってる」

「……」

断言したナルトに、サクラは口を閉ざしたみたいだった。
イテェー!となぜかキバの悲鳴が聞こえ、

「もういい……!私帰る!行くわよキバ、リーさん、サイ!」

捲し立てるサクラの足音が、だんだんと遠退いていくのを感じた。
ますます状況が読めないな。
嘘の告白でナルトを諦めさせようとして、本当にそれだけの理由で、小隊を揃えて追ってくる必要はあるの?

私は先生の外套の内側から剥いでて、印を結ぶ。
ボフン。
あたりが煙に巻かれ 私は元の大きさに戻って地面に着地した。
久しぶりの地面に、いつもの距離感。
カカシ先生と顔を見合わせて、ため息をついた。

「なんだか嫌な予感しかしないね」


そしてその予感は、現実のものになってしまう。

サクラに気付かれず分身体を残していったサイから、そして五影会談を終えて姿を見せたテマリさんから聞いた話によって、私たちはほとんど活路を失っていることを知ったのだった。

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