▼フェイク
マダラが特殊な時空間忍術で姿を消すと、ナルトがオレとテンゾウに交互に顔を向けた。
「シズクはどこに消えたんだってばよ!!ヤマト隊長、早くこっから出してくれってばよ!さっきのヤツを早ェとこ追わねーと!!」
「ナルト お前は少し落ち着け」
「カカシ先生ってばなんでそんな冷静なんだ!?シズクが連れ去られちまったんだそ!!」
焦るのも無理もないか。
オレはナルトの檻の手前に移動し、自分のマントの合わせ目に手を添わせ、下に着てる中忍ベストの巻物ホルダーを探り当てた。
「もう出てきていーよ シズク」
「は?」
胸元のルダーが揺れ、上蓋がひとりでに開く。
中から現れたのは、人指し指サイズのシズクだった。
「ぷはっ 苦しかった」
「あぁー!?シズク!?」
ホルダー前に掌を寄せると、シズクはそこへぴょんと乗ってきた。これにはナルトだけじゃなく、テンゾウもあんぐり口を開けている。
「先生、このベストちゃんと洗ってる?」
「匿ってあげてたってのにソレはちょい失礼じゃないの」
「え?え?どゆことだってばよ?」
現状が掴めないナルトとテンゾウに、人形サイズのシズクが種明かしを始める。
「さっき仮面の男が拐ってったのは私の分身体なの。こっちの私が本体。実はずっとカカシ先生のベストのホルダーに隠れてたんだ」
「い、いつから?」
「木ノ葉を里を出発する前から」
「先輩!なぜボクにまで隠してたんですか!」
「いやぁ〜……万が一ダンゾウと接触したときのことを考えてさ。あっちに情報を詮索するような感知タイプがいたら困るじゃない?別にお前たちを信用してなかったわけじゃないのよ」
「だからって先輩!」
テンゾウは依然としてぶつくさ言っていたが、ナルトの方はすっかり面白がって、シズクを自分の肩に乗せて遊びはじめていた。
「すっげーベンリな術だな!小人みてェ!この術使ったら一楽のラーメンも超特大になるってばよ!」
「その使い方はどうかなぁ……」
マダラから情報を引き出すため、敢えて分身体の自分を敵の懐につっこんでいったわけだ。
ナルトといいシズクといい、いつの間にかオレたちを驚かせるほどの成長を見せているな。
テンゾウも興味深げにシズクをしげしげと観察し出した。
「それにしてもよくマダラに気付かれなかったね。相手は写輪眼の使い手だろう?」
「影分身に改良を加えた特殊な分身だからうまくいったのかもしれませんね。今はどこにいるかはわからないですけど、分身が消えたら何かしら……、!」
話の途中でシズクは驚いたように目を見開き、口を閉ざした。
「どうしたの、シズク」
「分身体が消えたみたいです」
「何か収穫はあったかい?」
「いえ……あの、それがさっぱり」
「?影分身ベースの特殊分身なら、消えた後は本体のキミに記憶が蓄積されるだろう?」
「そのはずなんですけど、どこか異空間に連れてかれたあとの分身体の記憶が全然返ってこないんです」
シズク自身も予想してない事だったらしく、
何か情報を掴めるかと思ったのにと困惑していた。
考えられるパターンは二つ。
一つは単純に、分身体が行動に移す前に消えてしまったパターン。
もう一つは、先のマダラを名乗る仮面の男に、分身の記憶を消されたか、だ。不可能ではないが かなりの技術を要する手段になる。敵の不都合になりうる何かを、分身のシズクは知ったのだろうか?
「……いいか、マダラの言った事はとりあえず オレ達だけに止めておく。これは極秘事項だ。話の裏付けが取れるまで信用もできないし、余計な混乱は避けたい」
オレたちの望みとは裏腹に、サスケもまた、その秘めたる力で戦いの道を選んでいくのだろう。
そして――もうひとり。
「ん?」
くんくん。知った匂いをオレの鼻が嗅ぎ付けた。
これはサクラの匂いだ。どういうわけか、同期の仲間も何人か連れてオレたちへと近づいてくる。
木ノ葉の里にいるはずのサクラがなぜ、ここまで追って来る?
「シズク」
「はい?」
「サクラたちが来てるらしい。もっかいホルダーに入ってちょうだい」
「サクラが?でも、サクラなら隠れなくても」
「いいから早く」
オレは半ば強引にシズクをベストのホルダーに収納し、マントで完全に覆った。匂いからして忍犬使いもきてるみたいだか、この小ささだ。かぎ分けられないだろう。
「見つけた!ナルト……!」
程無くして宿の前に現れたのは、サクラ、サイ、キバ、そしてガイのとこのリー君だった。
「もう!探したわよナルト!」
「サクラちゃん!?なんでここに……あっ、っつーかさサクラちゃん!サスケのことなんだけ、」
こりゃすぐ話しちゃいそうだな。
サクラのもとに行こうとするナルトに、オレは「他言無用」と釘をさす。
途切れた言葉はすでに意味深だが、サクラはどういうわけか、サスケの名前が出てもナルトを詰問しなかった。
それどころか。
「サスケくんのことじゃなくて、私はアンタに話があってきたのよ」
「へ?オレ?」
「そうよ」
こほん。
軽く咳払いをすると、サクラは頬を染めてナルトにこう告げた。
「前から言おうと思ってたんだけど……実は私、アンタのことが好きなのよ」
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