▼渦に消える

「サスケはおめーのオモチャじゃねェ!!勝手な事言ってんな!!」

六道仙人の系譜から連なる悲劇を聞いてなお、ナルトはサスケを取り戻す意志を変えるつもりはないようだった。
一方で、シズクには確実に動揺の色が見てとれる。その揺らぎは、長門は感化されやすいというマダラの一言で、さらに抑止力を失った。

「長門とてめェを一緒にすんな!!やり方は違ってもあいつは本心で平和を望んでいた!けどおめーは違う!!」

「フッ そうだな」

シズクはチャクラ刀をマダラに向け、力の限り振りかざした。

「やめろシズク!こいつには効かない!」

「お前があの人たちを利用したんだ!!!全部お前が……っ!!」

刃がうちはマダラを引き裂くことは勿論なく、ヤマトの木遁を抉っていくだけ。
オレは雷切を消して、シズクの背後から手を回し、力ずくでシズクをマダラから引き離す。


「くだらないな。その証明が目的なら、なぜ尾獣を集める?お前の目的は一体何だ?」

「……しいて言うなら…完全体になる事か」

「完全体だと?」

こいつがマダラだとして、尾獣を全て支配下に置かれれば、どうなるか。考えるだけでも身の毛がよだつ。

「どういう事だ」

「お前らに話しても意味がない」

「白状しろ!いったい何をする気だ!」

シズクが叫び、力押しでオレの手の拘束を解いた。その瞬間、仮面の奥のマダラの赤い眼がギラリと光ったのをオレは見逃さなかった。

――マズイ、何をするつもりだ。

間髪入れずにマダラはヤマトの木遁から自身を自由にした。そしてシズクの前に、ゆらりと立ち塞がった。

「シズク 引くんだ!」

シズクは引かなかった。チャクラ刀を再度振りかぶり、マダラを貫く。宙を泳ぐ刀先がマダラの体があるはずの場所から完全に逸れると、マダラはシズクの手首をガッと掴んだ。

「!!」

オレもマダラ目掛けて駆け出したが、次の瞬間、マダラの周辺がぐらりと歪んだ。
写輪眼を中心に、風が渦を巻いた。
その感覚は、オレが万華鏡写輪眼で神威を発動している様子を、外から眺めているようなものだった。シズクはその渦に絡めとられた。

「シズク!!」

「カカシせ、」

んせい。

そう最後まで呼ばないうちに、彼女は忽然と消えてしまった。


一体 いま、何が。

「シズク……!?」

「てめー!シズクをどこにやったんだってばよ!?」

「安心しろ。殺しはしない。この娘にはまだ用事があるんでな、もっと効果的な場で話すとするよ。いずれ帰してやるさ」

「!?」

「お前らとの会話は楽しかったよ。じゃあな」


オレとヤマトの攻撃も空しく、マダラは先程と同様に、空間を歪ませてどこかへと消えていった。

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