▼戦うため生まれてきたのだよ

マダラが再び語り出したのは、遥か昔、六道仙人と呼ばれる忍の祖から始まる、憎しみの連鎖についてだった。
面で覆われてその表情を伺い知ることは出来ないけれど、カカシ先生の一言で マダラのチャクラに波立つような揺れを感じた。

「六道仙人だと……そんなものはただの神話のハズだ。輪廻眼は突然変異にすぎない」

「神話は真実になぞらえて語り継がれるものだ。かつて六道仙人は忍宗を説き平和を導こうとしたが、夢半ばにして最期を迎えた。六道仙人は意志を子供らに託す事にしたのだ」

兄は生まれながらの仙人の“眼”。
チャクラの力と精神エネルギーを授かり、兄は平和には力が必要だと悟った。
弟は生まれながらの仙人の“肉体”
生命力と身体エネルギーを授かり、平和には愛が必要だと悟った。

「悲劇だよ。六道仙人が下した後継者の決定が、永劫続く憎しみの呪いを生んでしまった」

「どういう事だ?」

「仙人は力を求めた兄ではなく 愛を求めた弟こそ後継者にふさわしいと弟を選んだ。己を後継者にと切望していた兄は やがて憎しみの末に弟に刃を向けることとなったのさ」


マダラはそこで一息つくと、はじめて、私の方に顔を向けた。
冷や汗が全身を伝う。

「なあ、お前もどこかでは聞いたことがあるだろう?雨月シズク。何せお前の先祖の話だ」

ドクン。
思わずマダラの仮面に顔を向けた。橙色の鮮やかな面。渦を巻くその下で響く笑い声は、私への嘲笑だ。この人がマダラであるならば、当然私の一族についても知っているだろうと、会った時から薄々考えてはいたけれど…

「どういうことだってばよ!?」

「兄弟には末の妹がいた。末子、“シャシ”……妹は仙人の死の間際、兄弟がいずれ争いを始めても末子が仲介に入り戦いを止めるよう、治癒能力を与えられた。しかし、シャシが兄と弟のどちらの勢力をも癒したことで、戦いは長引き、果てを失った。……今お前たちの目の前にいる、その娘の祖先だよ」

「私の先祖は……争いを止めようとしてたんじゃなかったの!?」

「治療で傷の癒えた戦士は再び戦場へ赴くだろう。本人の意思がどうあれ戦いを繰り返させたことに変わりはない。そう解釈はできないか?」

「…!」

ドクン、ドクン。

心臓の音がやたら大きく感じられた。身体中から汗が噴き出しているようにも感じられる。
二つの勢力を止める存在だと示したイタチに対し、マダラは私の祖先が戦いを悪化させたと断言した。
それでも、辻褄が合ってしまう。
この血に関して また一つ信じたくない事実を知ってしまった。

「時がたち、血が薄れても兄弟の子孫は争いを続けた。兄の子孫は後にうちはと呼ばれ、弟の子孫は後に千手と呼ばれるようになる。……そして末子は雨月と。このうちはマダラと初代火影・千手柱間との闘いも、運命だったのだ。我々は戦うためにうまれてきたのだよ」

私たち忍はその六道仙人のこどもたち。
パズルのピースのように3つの力に分けられたときからすでに、忍界の末路は決まっていたっていうの。

「ナルト……お前と会うのは二度目だが、千手の火の意志がお前の中に宿っているのが分かる。今もお前の中に、初代火影を見る事ができる。死んでもなおあいつは生き続けている……オレの憧れでありライバルであり……オレの最も憎んだ男を」

マダラは再びナルトの方に面を向け、記憶に浸るように告げた。
千手とうちは。
火の意志と憎しみ。
ナルトとサスケ。ふたりが運命に選ばれた次の二人になると。

「うちはは復讐を運命づけられた一族だ。一族の憎しみを全て背負い、サスケはそれを世界へぶつける。最も強い武器であり、友であり、力であるのが憎しみ。それがサスケの忍道だ。ナルト、お前はいずれサスケと戦う事になるだろう。イヤ……オレがお前にサスケをぶつける。長きに渡る因縁の戦いを終わらせ、うちはの存在をサスケに証明させるためにな」

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