▼うちはの真実

先立って、マダラは私たちにイタチの真実を暴露した。
それは想像を絶する人生だった。
イタチはうちは一族を監視するべく、木ノ葉葉側から送り込まれた二重スパイだった。
うちは一族の虐殺は、ダンゾウからイタチに下された任務。彼は一族の滅亡を望んではなかったのだ。それどころか、暁に身を投じて尚 彼は里を、サスケを守っていたのだ。

木ノ葉崩し以後 組織の一員としてナルトを拐いに来たあの日、彼は私たちをまんまと欺いた。組織の目論見と見せかけて、その実、彼の目的はダンゾウへの牽制だった。自分は未だ目を光らせていると証明するための。そして彼はサスケを保身し、サスケに殺される時を待ち、最期はより高度な写輪眼を引き出す前座として、己の命を落としたのだという。


「そんなんでたらめだ!!」

雪に包まれた中でナルトの叫び声が一層強く響いた。

「少しは判ってきたろう?サスケの事を話す上でイタチの事は避けては通れないからな」

「冗談はよせ。そんな話は信じられない」

左手の雷切が音を立てて揺れていた。あたかも、カカシ先生の心の動揺を表しているかのように。
マダラは至って平坦な口調で、それがイタチの真実と繰り返す。

「イタチはサスケのため、木ノ葉のために死んだ。イタチを地獄に追いやった世界をサスケは憎んでいる。今のサスケの行動は、全てサスケが己で決めたことだよ。サスケの師として、友として、お前らはサスケの本心を分かっているつもりでいたんだろうが とんだお門違いだ。本物だ 本物の復讐者だよ、彼は!」

幼い頃に出会い、弟と仲良くしてやってくれと微笑んだ、あのイタチは。
私を干柿鬼鮫から逃し 忠告してきたイタチは。
このマダラの伝えるイタチに重なる。

「嘘だ!!なぁシズク、お前もなんとか言えってばよ!!なんでずっと黙ってんだ!!!」

「……私は…」

ごめんナルト。私はマダラの吐露をはね除けられない。
どうしてサスケが里へ帰って来ないのか、その理由がたった今わかってしまった。
嘘だと繰り返すナルトの声が遠い彼方で響いてるように空しく聞こえてくる。


「オレも賭けだった。サスケがイタチの意志を取るか はたまた木ノ葉への復讐を取るのかね。だが彼は復讐を選んだ。本心はこちら側の人間だったという事さ。サスケの今の目的、それはうちは一族……そしてイタチを追い込んだ木ノ葉への復讐」

「何で、何であいつがこんな事になっちまう!!どうして復讐に向かっちまう!?」

「仕方ないのさ。それが血塗られたうちはの運命。遥か昔から永久に続いてきた呪いのようなものだ」

憎しみの運命。
呪い。
ナルトは長門とぶつかったとき、境遇は違えど同じ痛みを抱え、理想を追い求めたからこそ解り合うことができた。
しかしサスケが同じ分かれ道に立ち、復讐の道を選んだ事実に きっとナルトは耐えられない。

「憎しみとは別の視点で、イタチを考えたことが今まであった?殺すこと以外は本当に考えたことがなかった?」

大蛇丸のアジトで、私はサスケにそう言った。
何も知らずに 私はなんて浅はかなことを。サスケが直面したのは身を引き裂き血の涙が溢れるような真実だったのに。
サスケが選んだ復讐の道は、耐え難く 引き返すことも出来ないような 血濡れの細い細い一本道だったのに。

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