▼仮面の男
過度の交渉は五影会談に支障を来しかねず、雷影様を追うことは叶わなかった。一度体制を整えるためにも、私たちは宿をとることにした。
雪深い街道に 埋もれるようにして立つ宿。それぞれが個室についた後、私はどうしてもナルトの様子が気になって、ナルトの部屋の戸を叩いた。
「ナルト 入ってもいい?」
ノックを繰り返しても返事はない。
「ごめん。入るよ」
断りをいれつつ室内に入ると、脱力して寝そべるナルトの姿があった。どこを見るでもなく ぼんやりと宙を漂うナルトの視線。いつも元気なナルトの、こういう気力のない姿を目撃するのは滅多にない。
やるせない。身も心も全部懸けてサスケを追ってきたことが現れてるみたいだ。
「あのさ、ナルト」
「シズクわりィ……ちょっと一人にしてくれってばよ」
抑揚のない声。なんと言葉をかければいいか迷っていた、そのとき――
「ではオレと話でもどうだ?」
横たわるナルトの頭上に、奇妙な面を着けた忍が窓から顔を覗かせていた。
「!?」
声を発せられるまで全く気配を感じなかった。
ナルトの背後を取ったということは、狙いは。
「て……てめーは!!」
ナルトが螺旋丸を作り出し、面の男目掛けて放つ。しかし螺旋丸はナルトごと忍の身体を通り抜けるようにして突っ切っていってしまう。
目には見えているのに実体が存在しない……?なるほど、こいつは以前ナルトたちが遭遇した、物理攻撃の効かない“暁”の忍にちがいない。
「いきなり螺旋丸か。効かないのは知ってるだろ」
「じゃあこっちはどう?」
ナルトの攻撃後から間合いを置かずにチャクラ刀を振りおろす。急所は見切っていた。しかし斬撃も全く命中しない。こいつ、ペインと違って術のインターバルもないのか。
仮面の男の手がこちらに伸びかけたその瞬間、私たちの目の前に、突如として大木が出現した。
「ヤマト隊長!」
間合いを見切ったヤマト隊長が加勢に入ったのだと気付く。木遁忍術は敵の体を巻き上げていった。
「ナルトはじっとしてなね」
振り返れば、ナルトの目前にも格子状の木の檻が展開されている。これで敵が人柱力のナルトと接触する可能性は、まず無くなった。
木遁で捕縛された忍の背後、先生はとっくにやつの背後に回り込み、左手に雷切を掲げていた。
チャクラ刀の刃を鋭く伸ばして、私も暁の忍の首元に宛がった。厄介な忍術を使おうとも相手は一人。こちらは三人だ。
「さすが写輪眼のカカシだ。速い」
「そうカンタンにナルトに手は出させやしないよ。うちはマダラ」
(――マダラ!?)
カカシ先生の言葉に耳を疑う。
「だからさっきのオレのセリフは聞いただろ。このうちはマダラに一切の攻撃は通用しないと」
「やはり……うちはマダラか!?」
「ククク、別に簡単にいくとは思ってないさ。オレにも計画ってものがある。それよりも今は話がしたい」
「話だと?」
カカシ先生や暗部のヤマト隊長を前にして、敵は悠長にも話があると言った。まるで、この拘束から逃れるのは赤子の手を捻るようなものだといった態度だ。
「そうだ。ペイン長門を裏切らせたのは何なのか?ナルト……お前に興味ができた」
“ペイン長門”
男がその名を発すると、胸が奇妙にぐらついた。
こいつ 何を知ってる。
「そんなのはどうだっていい!!てめぇはサスケをどうするつもりだ!サスケの事を教えろ!!」
「サスケねェ」
前情報によれば相手は中々の手練れだ。
それも信じがたいことに、うちはマダラを自称してる。 どんな行動に出るか検討もつかず、カカシ先生もヤマト隊長も、固唾を飲んで仮面の男の次なる言葉を待っていた。
回答は、奇しくもナルトが望んだ通りのものだった。
「うちはサスケを語ることは、即ちうちはイタチを語ることでもある。いいだろう、話してやる。忍界の憎しみと恨みに骨の髄まで侵されたうちは一族の兄弟の話を!」
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