▼私がこの手で

シカマルが、珍しく私とサイを訪ねてやってきた。
面倒くさがりのクセに慎重に言葉を選びながらあることを告げて、去ってった。

オレ達が暁を止める。
そして オレ達でサスケも“止める”んだ、と。
シカマルの言う“止める”の意味が、“処理”すべきって内容を指してることき、気付かないほど私は馬鹿じゃない。


アカデミーに入りたての頃、私はよくからかわれてた。いのやシズクと仲良くなる前は、いつもひとりで泣いていた。
同じ頃、サスケ君は何かと戦うように修行に明け暮れていた。
いつもひとりで。
その姿を見て、彼の強さに憧れた。
私もサスケ君みたいに強くなりたいと感じた。
そして、憧れの彼に認めてもらえるならなんだってできると、そう思っていた。いい女になっていつかサスケ君のハートをゲットしてやるって。
下忍のときは不安も焦りもあったけど、大人になって一人前の忍になっても私たちずっとこうしていけるといいなって、当たり前みたいに考えてた。

それなのに、サスケ君のどこが好きだったか、今日はなんだか思い出せない。


「ナルト…私の、一生のお願い サスケくんを、サスケくんを連れ戻して」

あの日、サスケ君に帰ってきてほしいという強い願いが、ナルトへの懇願になった。

「サクラちゃんはサスケが大好きだからなぁ…」

「サクラちゃんがホントに苦しんでるって事は痛いほど分かるってばよ」

「サスケはぜってーオレが連れて帰る!一生の約束だってばよ!!」

「サクラちゃん!オレ 約束は絶対守るってばよ」

「まっすぐ自分の言葉を曲げねェ。それがオレの忍道だからよ」


ナルトの気持ちに気付いていながら、私はいつも投げやりな態度で真剣に取り合ったことはなかったし、ナルトの好意に甘えたことすらあった。
でも、ナルトを利用しようとしたことはない。そう思ってた。
それも、さっきサイに指摘されるまで、私は気付けてなかった。

“ナルトは君との約束をずっと背負ってるようだった。一生背負う気でいるみたいだった。それはまるで ボクのされているものと同じ、呪印のように感じた”

“ナルトを苦しめてるのはサスケだけど……サクラ、キミもなんじゃないのか?”

アイツには私にした約束まで重くのし掛かっていた。
呪印で人の自由を弄ぶなんて最低だと思っていながら、ナルトを枷でがんじがらめにしていたのは私だった。


それより先は何も言わないでと、涙ながらにシカマルに懇願した。私を傷付けないようにと気を配られた言葉さえ、いまは最後まで聞けない。
聞けなかったけど、はっきり判ってる。
厚手の任務用外套を羽織り、身支度は整った。

この呪いを解かなくちゃ。
私がはじめた憧れも恋も、私の手で終わりにするんだ。
サスケ君は私が、この手で始末する。

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