▼第一の試験

第一試験開始から、約20分。
目の前には、大人の忍でも解くのが難しい最高難度のペーパーテスト。
受験生たちの多くが頭を抱える中、密かに行動を起こす忍がいることに、最後列のわたしは気づいた。
一番分かりやすいのはキバだった。わたしの席の数列前に座るキバの、頭上に乗っかってる赤丸が、なにやらキョロキョロ辺りを見渡している。同様に、端に座るシノから、寄壊虫が一匹離れていくのをわたしは見逃さなかった。
さすが感知と情報収集に秀でた第八班のメンバーだ。こういう状況にはすごく慣れてるみたい。

一番後ろの席でラッキーだったな。そのおかげで気づけた。
この試験、カンニングは公認だ。寧ろ、周囲に察知されずに情報収集を遂行することこそが、この試験で求められている能力なのだ。まあ、このペーパーテストだと、サクラなら自力で解いちゃいそうだけども。
この受験生のうち数名は、解答を記述できる“正しい情報”を持つ者が紛れているにちがいない。


わたしは指先を軽く噛むと、机の下で印を組み、周りに気づかれないよう 音もなく口寄せの術を使った。
現れた相棒、忍鳥のカンスケを静かに自分の肩へとスライドさせる。
よしっ!これでオーケー。
幸い試験係には目を付けられていないようだし。

(カンスケ、サクラの解答用紙を見て、わたしに答えを合図してね)

案の定、サクラは既にほとんどの解答欄を誰にも頼ることなく埋めていた。
残る杞憂は、同じ班の自分以外のメンバーが試験の意味に気付いて情報収集を行えるか、だ。
サスケは、この試験の意図に早めに気付いてそうだな。写輪眼を発動すれば、模範回答をコピーすることは容易だ。白眼を覗けば、サスケほどこの試験がカンタンな忍はいないだろうし。
仲間の背を探して見回すと、サスケの手がものを書いている様子が見て取れた。あ、やっぱりね。
これで、あとはナルトだけ……

……うわぁ〜、ナルト、気づいてなさそう!!

忍は裏の裏を読もうとか言っても 裏の裏イコール表にしかならないヤツだし。っていうか、アカデミーのイタズラ常習犯だけどヘンなとこで正義感あるから、カンニングはカッコよくないとか火影になるオレには相応しくないってばよ、とか考えて盗み見しなそう。
厄介すぎる。0点は問答無用で失格になるし、こうなったらもう、残った謎の10問目に賭けるしかないんじゃ……?


そうこうやきもきしながら、ラスト10分を迎えた。
試験官のイビキさんが突き付けた最後の問いの条件は、こうだ。
その問題に挑んで正解を出せなければ、中忍試験への受験は未来永劫剥奪される。辞退する者は、仲間ふたりを道連れに失格になること。
この場で辞退したい忍は手を挙げろとのイビキさんの言葉に、大袈裟にリアクションしたやつが、ひとり。

「オレは逃げねーぞ!!」

勢いよく机を叩く音とともに、ナルトは目一杯に叫んでいた。震える手を空に突き上げたときには、サクラやみんなはまさか、と目を疑ったがみたいだったけど。ナルトがどう選択するかなんて、手に取るようにわかる。

「怖くなんかねーぞ!受けてやる!!もし一生下忍になったって 意地でも火影になってやるから別にいいってばよ!!」

鼻息荒く宣言仕切った顔は、いきり立ちつつもどこかすっきり晴れていて。

「もう一度訊く。人生を賭けた選択だ。やめるなら今だぞ」

「まっすぐ自分の言葉はまげねえ それがオレの…忍道だ!!」

ナルトの決意は、まるで伝染するかのように、周囲の受験生たちの背中を押してるみたいだった。
前半の情報収集戦にはてんで察知しなかったくせに、豪語しちゃってさ。しかも他のみんなまでけしかけちゃうなんて。
笑っちゃうよ。いかにも意外性忍者らしいじゃない?
もう、ほんとに下忍のまま火影になっちゃいそうだなぁ、ナルトってば。

「では…ここに残った全員に 第一の試験合格を言い渡す!!」

なんとか第一の試験をクリアしたわたしたち。第二の試験で大きな受難が待ち構えていることを、まだまだ知る由もなかった。

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