▼最善手は何だ

里の忍たちがシズクの分身変化を用い、ダンゾウの暗部を翻弄する陽動作戦を開始したと カカシ先生はオレたちに教えた。
だがこれは問題の根本を叩いているわけじゃねえ。

お次の問題は、肝心のシズクを五代目の目覚めまでどーしとくか、だ。


「ねぇ先生。さっきシカマルにも言ったんだけど、私 ダンゾウと話がしたい。私への指令を撤回してもらえるよう直接頼みたいの」

コイツがそう言い出すのを予想していたんだろう。カカシ先生がため息をつく。

「ダンゾウに会うってのはかなりの無茶な提案だが……五代目が目覚めるまでの間 お前が里を離れた方が良いのは確かだ。実をいうと オレはこれからナルトに付き添って里を数日離れることになってるんだ。あいつのたっての希望でね。お前が一緒に来るって手もなくはない」

なくはない。その歯切れの悪ィ言い回しが、オレにはどっか気にかかった。

「復旧作業と任務で慌ただしいこの緊急事態に、ナルトが里外に何の用事スか」

「……お前たちにも伝えておくべきだな。落ち着いて聞いてほしいんだけど、ダンゾウは里に帰還してから、サスケを始末する指令を新しく出した」


シズクはぽかんと口を開け、しばらく呆気に取られていた。

「うそ、だってサスケの処罰は保留になってるはずでしょ!?」

「サスケはイタチ討伐後、暁に加入して雲隠れの人柱力を狩ったらしいんだ」

「暁だと!?」

今度はオレが声を荒げる番だった。
サスケが自分の復讐を遂げたとは聞いていたが、仇のイタチが身を寄せていた暁に加入したってのは、道理が矛盾してるだろ。アスマを殺した暁にオレが加入するのと同じようなものじゃねえか。
一体何がどーなってやがる。
サスケ お前に何があったかは知らねーが、そこまで堕ちちまったのかよ。

「首領のペインが死んでも、暁は止まらないの?」

「どうやらそうらしい」

「その雲隠れの一件は本当にサスケなの?」

「ああ。雲隠れの忍から直接聞いた話だ」

「サスケに何があったんだろう……」

「詳しいことはまだわからない。サスケの始末を要求してきた雷影に直談判するって、ナルトが言ってきかなくてね。どーも」

よほどショックがでけえのか、問い質したきりシズクは黙りを決め込んじまった。

「通常、五影会談には従者は二人までしかつけられない。ダンゾウの手下が自由にうろうろする里よりも、シズクを狙う忍は少ないはずだ。オレとヤマトがナルトに同行するし、ね」

「にしてもリスクが高すぎるんスけど」

「シカマル お前の意見は尤もだが…最終的にどうするか決めるのはシズクだ。……で、どーする?」

オレとカカシ先生は同時にシズクに目をやった。顔を見る限り、もはや答えは、聞くまでもなく。

「行くに決まってるでしょ!」

やっぱそうなるか。いや、サスケの名前が出た時点でコイツが引くとはハナから思ってねーけどよ。


「ま、そーいうことだから。しばらく預かるよ」

カカシ先生は同情ぎみにオレの肩をぽんと叩いた。

「と、そうと決まればあまり悠長に話してられないな。ナルトとヤマトと合流しよう。シズク」

「……」

「シズク、聞いてる?」

「あ、ごめんなさい。ちょっとボーッとしてた……」

シズクの視線の先には里の風景が。
ペインの術で掘り返された土に、建物の基礎がぽつりぽつりと作られ始めた新しい里がある。

これが最後のチャンスかもしれないんだね。
呟いたシズクは俯きがちで、表情まで確かめることができなかった。


――最後のチャンスか。
確かにそうだろうな。たとえ身の潔白を証明出来なくてもナルトやサクラはサスケを擁護すんだろう。

だけどよ、それが本当に最善手か?

真意はどうあれサスケは犯罪者に成り下がった。オレたちの知る、こうであってほしいっつーサスケはもういねェ。

仮にダンゾウの命令を退けてサスケを守れたとしても、代わりに木ノ葉と雲との関係は最悪のものになっちまう。雲隠れが意義を申し立てたら、戦いは免れねェだろう。
サスケひとりの命と里のこれからとは、天秤にかかっちまった。

お前らの気持ちは痛ェほどわかる。サスケを“止める”ことを選べんならオレだってそうしてェ。ナルトがペインを説得したみてェにけじめをつけられんならと考えもしたが、ペインのときとは状況が違う。今サスケを選べば、もっと悲惨な結末に道が逸れていくかもしれねえ。
理想だけ掲げるには早すぎるし、サスケのことにはもう 遅すぎんだ。それが分からないほどガキじゃないだろ。

たとえサクラやいのにとって一生の未練になっても、あいつらが戦争で殉職したり家族を失う道に、オレは進みたくねえんだ。

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