▼ルーキーズ

時間ギリギリでやってきたナルトたちとともに、カカシ先生に見送られながら、わたしは301室へと足を踏み出した。
室内は険しい表情をした受験生で溢れかえってた。見慣れない他里の額宛て、柄の悪そーな人や結構年上の忍も多くて、サクラだけじゃなく、ナルトですら気を張ってる。さっきのあの、湯隠れの怪しい忍はどこだろう…人垣をキョロキョロと見回していた、そのときだった。

「サスケ君おっそーい!」

サスケの背後から強引に抱きついていたのは、言わずもがな、いのだ。

「私ったら久々にサスケ君に会えると思ってぇ〜、ワクワクして待ってたんだからー!」

語尾にハートマークをつけ、顔を赤らめながらサスケに熱い視線を送るいの。反対に、なんだか迷惑そうに顔を歪めているサスケと、ふたりを見て激昂しているサクラ。

「サスケ君から離れなさいよ!いのぶた!」

「あ〜らサクラじゃな〜い。相変わらずのデコり具合ね。ブサイク!」

「なんですってー!!」

サスケに抱きついたままのいのは、青筋をたてたサクラにあっかんべーを返してる。アカデミーの頃から全く変わらないふたりのやりとりだ。久しぶりの再会に、思わず顔がほころんでしまう。

「相変わらずだね、いの」

「シズク アンタ最近どーしてたのよ?全然遊びに来ないで」

「ごめんごめん」

不満そうに頬を膨らませるいのの後ろから、これまた見慣れたシルエットが。そうだよね、いのがここにいるってことは、三人揃って来てるってことだもんね。受験するのめんどくせーとか言ってたのに、いのになぁ。
ナルトも気づいたようで、「なんだぁオバカトリオか」と笑いながら近づいた。

「ナルト、その言い方やめろ!」

シカマルはいつも通り、口をへの字に曲げて、両手を突っ込んだままやってきた。隣ではチョウジ君がお菓子を食べている。すっかりお馴染みのパターン。ナルトから順に見回して、わたしに気づいたシカマルは目を見開いた。

「ってオイ なんでお前がいんだよ!受験しねえって言ってただろーが」

「やっぱ試験受けよっかなってさ。ほら、女心は秋の空っていうでしょ」

「は?誰がオンナ心だよ。ったく、クソめんどくせーな……」

馴染みのメンツが目を引いたのか、懐かしい面々はさらに増えてく。そう、もったいぶった様子のキバを筆頭に、シノとヒナタもやって来たのだ。

「これはこれは皆さんおそろいでェ!」

「第八班もかよ!」

「今年の新人下忍10名全員受験ってわけか!さてどこまでいけっかねェオレ達、ねェサスケ君」

「フン えらく余裕だな、キバ」

「オレ達は相当修業したからな。お前らにゃ負けねーぜ」

「うっせーってばよ!サスケならともかくオレがお前らなんかに負けるか!!」

総勢10人。普段はそれぞれの班で任務についてるから、全員で顔を合わせるのは下忍の説明会以来だ。
そんなこんなで緊迫感のある待機教室で久しぶりの再会に喜び華を咲かせているところへ、、浮かれてるわたしたちを咎める受験者がいた。

「もう少し静かにした方がいいな……キミたち、アカデミー出たてホヤホヤの新人10人だろ。かわいい顔してキャッキャッと騒いで、まったくここは遠足じゃないんだよ」

「あ カブトさん」

「シズク 知り合い?」

サクラの問いかけに、わたしは手のひらをカブトさんに向けて紹介する。

「うん。薬師カブトさん。医療班の同僚なの」

「へェ、じゃあシズクの先輩なんだ」

「いや、正しくは彼女が先輩なんだけどね。彼女はご隠居様の弟子でエリートだけど、ボクは単なる端くれだから」

「ぎゃはは!シズクがエリートォ?なわけねー……ってぐは!」

腹を抱えて笑ってるナルトに、ドゴ!と小気味いい音を立てて右ストレートを食らわせた。よし、完璧なフォーム決まった!

「それよりキミたち、辺り見てみなよ」

「辺り?」

カブトさんの言葉に全員が後ろを振り返ると、不機嫌な顔でこちらを痛いほどに睨みつけてくる視線とかち合った。

「試験前でみんなピリピリしてる。どつかれる前に注意しとこうと思ってね。まあ 右も左もわからない新人さん達だしな」

ここは、かわいい後輩にちょっとだけ情報をあげようかな。カブトさんは朗らかに笑い、懐から手のひらサイズの札を取り出した。

「この忍識札でね」

「忍識札?」

「情報をチャクラで記号化し、焼き付けてある札のことだよ。見た目は真っ白だけどね。例えばこんなのがある」

チャクラを練った指先がふれると、無地の小さな札が変化して、大きな立体グラフが現れる。
情報は、今回の各里の受験者数の統計だった。
カブトさんが丁寧に説明しているあいだ、わたしはグラフの下に明記されている“湯1”の文字に目を奪われていた。
やっぱりあの時通り過ぎた忍は、ひとりだけで受験しに来てるんだ。
サスケの要望でロック・リーさんと砂隠れの我愛羅の情報を教えてもらった後、わたしは気がかりな忍について訊いてみた。

「カブトさん、湯隠れの忍の情報を見せてもらえますか?」

「ああ 湯隠れのキリュウか。残念ながらボクも詳しい情報は持ってないんだ。ただ、噂は耳にしたことがあるよ」

「うわさ?」

「数年前、奴は参加した中忍試験で、他の受験生を無差別に手にかけたらしい」

「……」

「何か気になることでもあったのかい?」

「いえ。なんでも」

想像以上の曲者に、無意識に拳に力が入った。上等じゃないか。

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