▼呼び続けて

敵と判断した今、シズクの能力がこれほどまでに厄介なものだったのかとシカマルは痛感する。
怪力、剣術。戦闘能力の高さに加え、回復能力を盾にどんな捨て身をも苦としない。自己を省みない動きは、シカクとシカマルの頭脳戦をことごとく無茶な手で打ち破っていく。

「アレしかないな」

父の耳打ちにシカマルは前線に出る。シカクはその後方で先程と違う印を結んだ。

忍法・影縫い!
生き物のように自在に動くシカクの影に紛れ、シカマルはクナイ片手にシズクへと駆け出した。チャクラを帯びたクナイをシズクの足場に打ちさえすれば影を伸ばせる―――影真似手裏剣だ。
しかし仕込みに気付かれているのか、シズクは火遁を口次々に放ってクナイを火炎で撥ね飛ばしてしまう。それもシカクの影を器用に避けながらだ。その身がクナイを全て弾き、とうとうシカマルの前に立ち塞がった。
シカクの影も間に合わない。

「シカマル!」

シズクによって振り上げられた刀。

「シズクさん 止めてください!!」

誰かが叫ぶ声がした。


*

暗号班の忍の特徴は、単に知能指数が高いということではありません。ぶっちゃけ、どんなに頭のいい人間でも、解けない難題にぶつかることってありますから。
大事なのは、答えを導き出すための冷静さを備え、最後まで粘り強くあること。私の周りはそういう人たちの集まりです。

はじめてシカマルさんを見たときに驚きました。
出会ったきっかけは、五代目火影様が忍を何人か選抜し、暗号部で演習を行うプログラムの一貫でした。シカマルさんはその演習に参加し、面倒臭いと散々公言しておきながら、暗号班も顔負けの速さであっさりと暗号解いてしまったのです。
あんな人はそうそういません。ええ、私は覚えていました。記憶するのも解読するのも、得意ですからね。

友人が少ない私ですが、耳にはしていました。それにぶっちゃけ気がついていました。暗号と同じに、至極簡単。好きなひとの好きなひとに、気づかないわけないでしょう?

シズクさんと戦っているシカマルさんの背中を、見ていて悲しい。

「シズクさん 止めてください!」

だから私は叫ぶんです。

「アナタが今戦ってるのはアナタの大切な人でしょう!シカマルさんをこれ以上苦しませるんですか!」


*

シホの声が戦場に響いた。シカマルの体に痛みはなく、そこには、刀を振り上げたままに 微動だにしないシズクの姿がある。正確には“何か”がシズクの動きを阻止しているのだ。止めているのはシカクの影ではなかった。


「……シホの声が聞こえてんのか」

その一瞬の隙を見逃さない。
シカマルはシズクの目と鼻の先に立つと印を結ぶ。たちまちシカマルの影はシズクの足元から体の上へ上へと移動し、首まで巻き付いた。

―――影首縛り、成功。

「おい」

シカマルは忍術を緩めることなく、目前のシズクに向かって怒鳴った。

「操られてんだか何だか知らねーが 里の非常事態にお前は何やってんだ!!目ェ覚ませ!!!」

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