▼火の意志
大樹みたいな人だった、アンタを忘れない。
「どういう事だ!?いつの間にこんな!?」
「前もってここに仕掛けを準備してただけの事だ」
チョウジが掘った大穴のトラップに、オレは飛段を陥れた。バラバラと土の塊が 奈落の底へと落ちていく。
「人を呪わば穴二つ」
残り僅かになったタバコを拾い、ライターで火をつけて。
煙を深く吸い込み、胸に溜める。
2秒。
そして吐き出す。
――――あの人の吸い方を、見よう見真似で。
「お前はオレの師を呪い殺した。てめーだけのうのうとはしゃいでられると思うな。そいつがてめーの墓穴だ」
「クッ…ククク…」
目の前の化け物は身体中に起爆札を巻き付けられてもなお、笑う。不死は恐怖すらしないのか。幾らバカでも、自分の末路は分かってる筈だ。こんなとき位人間らしくしててほしい。
「オレは死なねェ!体をバラバラにされて首一つになろうが、必ずはいずり出ててめーのノド先に食らいつきに行ってやる」
ああ、オレにお前は殺せねェ。それに殺すよりもっと深い償いでなきゃ、気も晴れねェしな。
「この森は火の国でも特別な場所でな……オレ達一族だけが立ち入る事を許されてる。他には誰も来ない」
「!」
「オレ達一族がずっとお前を見張っておく」
人を呪わば穴二つ。
人を謀れば人に謀らる。
お前を手にかければオレももう元の道には戻れねえんだ。これは弔いで、大義を背負っていても、間違いなく人殺しなのだから。
オレは木ノ葉だけでなく、オレの一族をも巻き込む。家族も、オレの子孫となるであろう人間たちをも。
この呪いを一生抱えて生きる。それがオレのケジメだ。
同じ穴は御免だが、オレも一緒に堕ちてやるよ。
てめーが消えてなくなるまでどこまでもな。
「よくやったな シカマル」
不意に、いつものように肩を叩かれた気がして。
「オレの火の意志…お前に託したぞ」
さよなら、先生。
アスマの煙草を手放して、オレは詰めの一手を指した。
「ヒャハハハ……」
左足は頭の上方向にある。手は、三メートル先に転がっている。ちぎれて木っ端微塵になれども、この男はまだ生きている。
「何てザマだ……オレをこんなにしやがって…」
これがオレの背負う物か。
「てめーには必ずジャシン様のバチが当たる!!ジャシン教より大いなる裁きがお前にィィー!」
「そんなもん怖かねーんだよ。オレとお前じゃ信じてるモンが違う。オレが信じてんのは“火の意志”だ」
オレは起爆札の巻かれたクナイを引っ張り出す。長い付き合いになるだろうが、この狂言を聞くことも2度とないだろう。
最後にもう一仕事。
次で詰めだ。
「てめーの神はそのくだらねェジャシン様でも何でもねェ。今はこのオレだ。オレが裁きを下す」
クナイをポイントに打ち込み、再び爆風が吹き荒れる。
「さっき言ったよなあァ?テメーにはジャシン教により裁きが下るってよォ、なァ!?」
この先も続くだろう。上等だ。
「ゲハハハハ!!!その裁きを下すのはオレだァ!てめーなんて歯だけで十分だ!良く噛んでバラバラにしてやるぜェ!」
その墓穴で、永遠に苦しめ。
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